デービッドソンは1999年まではメジャーの審判だったが、その年に審判組合がMLB機構と労使交渉を行なった際、デービッドソンを含む一部の審判たちが交渉戦術として辞職しており、WBC当時はマイナー所属だった。それでもメジャーの審判として18年のキャリアがあったため、重い立場で起用されたのである。

 誤審の裏にはそうしたアメリカ側のお粗末な事情があった。

 それ以前に、誤審が発生した試合で、4人の審判のうち3人がアメリカ人、1人がオーストラリア人だったことも問題だった。他競技の国別対抗の大会であれば、対戦国と国籍を同じくする審判が多数起用されることはない。そもそも大会では37人の登録審判のうち、22人がアメリカ人という極めて偏った構成だった。

 審判の問題だけではない。試合の組み合わせは抽選なしで決められ、アメリカは決勝までキューバをはじめとする中南米の強豪国と対戦しないことになっていた。使用球はアメリカの選手が使い慣れているメジャーの公式球だ。そもそも国際的な機関ではなく、MLB機構とMLB選手会が大会を主催する。要するに「アメリカの、アメリカによる、アメリカのための大会」が生んだ誤審だった。

※週刊ポスト2015年6月19日号

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