韓国がいわば「風見鶏国家」として生きてきたのは地理的、歴史的に背負った宿命である。韓国の立場で考えれば、そうする以外に選択肢がない環境下で巧みに生き延びてきたとも言える。

 日本に対する不条理な非難はもちろん腹立たしいが、国の生き方として考えれば、批判どころか、むしろ「よくぞそこまで」と評価してもいいくらいではないか。

 たとえば、日本共産党と比べてみる。共産党は口を開けば「中国や韓国との対立は外交で解決すべきだ」と言っている。彼らが唱える外交とは相手国との話し合いだ。だが、真の外交はどれくらい第3国を視野に入れて味方につけるかが勝負になる。

 よく「国際社会の理解が大事」などと言うが、煎じ詰めれば、要は第3国の問題なのだ。共産党は相手国だけにとらわれていて、米国や中国、ロシアのような第3国との関係を見ていない。

 米国と中国を動かしたのは日米首脳会談だった。すると韓国も日米、米中関係の動きに呼応して対日関係を修正した。韓国は共産党のように対立相手国にとらわれているわけではない。弱小の半島国家として生きざるをえないがゆえに、揺れ動く周辺情勢をしっかり見ているのだ。

 これは共産党だけの問題でもない。日本だって実は韓国と同じである。自分が主導権を握って世界を切り盛りできるわけではない。緊張した現実世界の制約下で生きざるをえないのだ。日本は国内の都合で世界を相手にする視野狭窄に陥っていないか。安保関連法案の議論を聞くたび、そんな思いを強くする。

■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2015年7月10日号

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