国際情報

イスラム国に拉致された15歳少女「被害を日本人に訴えたい」

 ジャーナリスト・後藤健二さんらが「イスラム国」によって処刑されてから5か月が過ぎた。当時、国内の報道はイスラム国一色となり、安倍首相は「犯人を法によって裁く」と大見得を切ったが、その後の動きは鈍く、メディアの扱いも日を追うごとに小さくなっている。

 現地では悲劇の連鎖が続いている。最前線に近いイラク北部で、イスラム国に拉致され、筆舌に尽くし難い苦痛を受けた後に解放された少女の告白を報道カメラマン・横田徹氏がレポートする。

 * * *
 くっきりした目鼻立ちで少し大人びて見える15歳の少女は、驚くほど感情を見せなかった。無表情で声のトーンは変わらない。ただ、「自分がイスラム国から受けた被害、そしてここで起きていることを、日本の人たちに訴えたい」と語り、筆者の取材、そして撮影に進んで応じた。そこに彼女の強い覚悟を感じた。

「連れて行かれたのはモスル(イスラム国支配下にあるイラク北部の都市)の収容所でした。もともとキリスト教の教会だったんだと思います。壁に十字架が描かれ、聖書が置いてありました。

 窓は毛布で塞がれていて、外の光は入ってきません。建物の中に700人くらいの女の子がいたと思います。私たちは戦闘員のレイプから逃れるために、『どうやって自殺しようか』と話し合っていました」

 昨年8月にイスラム国に拉致された15歳の少女・ラマ(仮名)。今はイラク北部のトルコ国境に近い避難民キャンプで暮らしている。

 昨年8月3日深夜、イスラム国はイラク北部のシンジャールへ侵攻し、クルド人の宗教少数派であるヤジディ教徒たちは町から逃げ出した。ヤジディ派はイスラム国から悪魔崇拝として迫害される存在で、当時、街の北側にあるシンジャール山には約5万人のヤジディ教徒が逃れたといわれる。ラマもその一人だった。

 山の麓から中腹にかけて歩くと、車の残骸が放置されている。逃げ切れなかった者がイスラム国の兵士に捕らえられた。

 道路や路肩には、大量の衣服が残され、女性の下着があちこちに散乱している。今も生々しさが残るこの現場で、多くのヤジディ教徒女性が拉致された。ラマは一夜を山中で過ごし、翌日にシリア国境へ向かう途中で捕まった。

「4歳と8歳の妹が一緒でした。倉庫のようなところには、15人くらいの女の子がいました。その日の夜中、イスラム国の部隊のリーダーらしき男がやってきて、私を連れ出そうとしたんです。必死になって妹2人を指さして、『自分はもう結婚しています。この2人の女の子は私の娘です』と泣きながら言い張ったら、男は引き揚げていきました」

 その後、ラマは家族と引き離され、冒頭で語ったレイプに怯える少女たちで溢れる収容所にたどり着いた。

※週刊ポスト2015年7月17・24日号

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン