安藤氏はテレビ番組で、ザハ氏のデザインを採用しても森の木を切ることにはならないと語っていた。ところがその数週間後、地元では木をどんどん切り倒し始めた。そういうやり方にも、地元住民は不信感を募らせている。
大会後も残る建造物だからこそ、地域に溶け込んだ空間と建物が求められる。地域住民が有効に使える広場や野外劇場、商業施設などを組み合わせた街づくりの一環としてのスタジアムはできないのだろうか。
今回のザハ案のようなマッチョなデザインは、時代にも合わない。そうしたデザインを押し付けるのは、建築家のエゴに思える。
2020年東京五輪のコンセプトは『Discover Tomorrow~未来をつかもう~』だ。五輪が終わった後の未来をスタジアムとともに生きていく地元住民の気持ちをもっと考える必要がある。安藤氏が今も40年前の志を忘れてはいないと思いたい。
※週刊ポスト2015年7月31日号