ビジネス

あなたの会社に突然家宅捜索が 押収物や仕事はどうなるのか

 午前11時。家電メーカーA社の定例会議が始まった瞬間、秘書が血相を変えて会議室に飛び込んできた。

「ガサ入れが来ました!」

 間もなく約10人のスーツ姿の男たちが姿を現わし、捜索・差押許可状(ガサ状)を示した。

「粉飾決算の疑いで強制調査を行ないます。皆さん会議室から出ないで下さい」

 そういって男たちはオフィス中をひっくり返し始めた。役員室の引き出しを開け、専務の本棚を漁り、社長は金庫を開けるよう促される。帳簿から書類、ノートパソコンまで次々に段ボールに詰め込んで運び出される。その間、約3時間。

 フロアには捜査員が等間隔に立ち、社員の動きを逐一監視している。外部への連絡は原則NG。外出する時は捜査員にカバンの中身を徹底的にあらためられる。

「品数が多いので、押収品目録は後で渡します。社長は同行を」

 彼らが去った後、A社からは何もかもが消えた──。

 これは取材を基にしたシミュレーションだが、いつあなたの会社がその対象となるかわからない。

「ガサ入れというと粉飾や脱税など、大事件のときのみ行なわれると思うかもしれませんが、例えば警察の場合は『従業員が窃盗した』など比較的軽い犯罪でも入ることがあります」(元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏)

 意外と身近な出来事なのである。気になるのは捜査員が何を持って行くかだ。FXの所得隠しで国税局にガサ入れを受けた経験を持つ『突然マルサがやって来た!』(小学館刊)著者の磯貝清明氏が語る。

「自宅にガサが入ったときには、通帳はもちろん、エロ本や、無修正アダルトDVDさえも『記録が残っている可能性がある』と段ボールに入れて押収されました。郵便物などの書類を調べる人、現金を数える人、壁をコンコンとノックしながら隠し場所を探す人など、分担して徹底的に捜索が進みました」

 事件にかかわりがありそうなものはすべて押収の対象となる。前出の小川氏の話。

「パソコンはもちろん、携帯、タブレットも押収されることも多い。メールの内容ももちろん把握される」

 パソコンに関しては押収後に丸ごとコピーを取ってから返却されるので、ある程度の期間がかかる。そのためしばらくは仕事に支障が出てしまう。精神的にも物理的にもダメージを受けるわけだ。そして絶対に逃げられない。

「『捜索場所に入る手段』には規定がなく、現場の裁量に任される。たとえば、外国人が逃亡時間を稼ぐためにドアにバリケードを張っていたときには蹴破って突入しました」(小川氏)

※週刊ポスト2015年7月31日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
“高市効果”で自民党の政党支持率は前月比10ポイント以上も急上昇した…(時事通信フォト)
世論の現状認識と乖離する大メディアの“高市ぎらい” 参政党躍進時を彷彿とさせる“叩けば叩くほど高市支持が強まる”現象、「批判もカラ回りしている」との指摘
週刊ポスト
国民民主党の玉木雄一郎代表、不倫密会が報じられた元グラビアアイドル(時事通信フォト・Instagramより)
《私生活の面は大丈夫なのか》玉木雄一郎氏、不倫密会の元グラビアアイドルがひっそりと活動再開 地元香川では“彼女がまた動き出した”と話題に
女性セブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
前伊藤市議が語る”最悪の結末”とは──
《伊東市長・学歴詐称問題》「登場人物がズレている」市議選立候補者が明かした伊東市情勢と“最悪シナリオ”「伊東市が迷宮入りする可能性も」
NEWSポストセブン
日本維新の会・西田薫衆院議員に持ち上がった収支報告書「虚偽記載」疑惑(時事通信フォト)
《追及スクープ》日本維新の会・西田薫衆院議員の収支報告書「虚偽記載」疑惑で“隠蔽工作”の新証言 支援者のもとに現金入りの封筒を持って現われ「持っておいてください」
週刊ポスト
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン