ビジネス

マッドマックス「敵の組織はブラック企業そのもの」と専門家

 ネットで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が大人気だ。破天荒なSF物語であるが、千葉商科大学国際教養学部専任講師の常見陽平氏は「雇用・労働問題告発映画だ!」と指摘する。

 * * *
 観てきましたよ、話題の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。ソーシャルメディアで絶賛の声をよく見かけたので、気になっていたのです。

 結論から言うならば、この夏、必見の映画の一つです。もう救いようのないくらいトコトン荒廃した世界、ド迫力のアクションはもちろん見どころです。

 私はここで描かれているのは、現代の日本の労働社会の問題ではないのかと思った次第です。敵の組織はブラック企業そのものだし、主人公のチームも、ダイバーシティー推進の本質を物語っているように思います。労働社会学視点で、この作品を読み解くことにします。

 まず、簡単に作品についてご紹介しましょう。1979年から始まった『マッドマックス』シリーズの、実に27年ぶりの最新作です。核戦争後の地球、石油も水も尽きかける中、そこには生存したもの同士が物質・資源を暴力で奪い合う世界が出現していました。

 トム・ハーディ演じる元警官のマックスは暴徒の襲撃を受け、身柄を拘束され、シタデルという砦に連行されます。そこには、ボスのイモータン・ジョーを頂点とした狂信的な集団が、地下水と農作物を牛耳り、恐怖と暴力で支配する社会が築かれていました。

 ジョーの部隊を統率する女性のフュリオサ大隊長は彼らが出産目的に監禁していた5人の妻たち(ワイブス)を連れて、「緑の地」への逃亡計画を実行。それを知ったジョーたちは追撃を開始。マッドは上手く逃げフュリオサと合流。元々ジョーの手下だったニュークスも仲間に加わります。果たしてこの逃走劇は成功するのでしょうか・・・? ストーリーはこんな感じです。

 ややネタバレですが、冒頭の主人公マックスが突然トカゲを足で潰して食べるシーンからやられます。もう、息つく暇は微塵もない、ずっと興奮と緊張が続く映画でした。ひたすら改造車が爆走し、とことんカーチェイス。これまた極限まで悪趣味なルックスの敵たちが銃撃、肉弾戦などのバイオレンスを繰り返すわけです。いちいち、リアルです。本当、リアル『北斗の拳』か『ジョジョの奇妙な冒険』といった感じです。

 まあ、もともとこのシリーズは80年代の日本の漫画、アニメにかなり影響を与えていますよね。映画のトレーラー(予告編)にも登場した、ギターから炎を出す兵士はヘヴィメタルファンからするとたまらない描写でした。夫婦で来たことを、激しく後悔しました。「なんでこんなものを見せられないといけないのか」と帰りのクルマで説教されました。

 本題はここからです。冒頭で触れたように、この映画は実は日本の労働問題を描いた映画のように見えてしまったのです。

 まず、イモータン・ジョー率いる敵の軍団について。これは、まさにブラック企業です。骸骨を模したマスクをかぶり、自分を神格化させ、味方たちに死んだら生まれ変わるという思想を植え付けるという、カリスマ性、洗脳はブラック企業の経営者がやりそうなことです。過酷な環境においては、独裁者が生まれやすいわけです。人間は洗脳され、目的を与えられ、資源を握られると、ここまで思考停止し、暴走してしまうのかと思った次第です。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン