●旬の俳優
福士蒼汰と本田翼。たしかに、旬な人。でも、演技力を見ればまだまだ。数秒なら人目を惹いても、真正面からたくさんのセリフを語りつつ感情を表現するとなると、ぎこちなさばかり目立ってしまう。そんな二人を揃って主役にしたキャスティング。無理はなかったのか。「旬」はいいけれど、旬をどのように戦略的に使うのか、工夫のしどころでは。
今回、敢えて30代の若手プロデューサー、脚本家らを抜てきしたと聞いて改めて驚かされた。ずいぶん古風なドラマだなぁ、と感じつつ見たから。
「未来に向かって球を投げる姿勢は評価できる。オリジナルをやるという気概を持ってやってくれている」と、亀山社長は制作現場を誉めたそうだが(2015年5月29日「スポニチアネックス」)ドラマが始まる前に制作陣を「評価できる」とか会見の場で語ってしまうあたりに、『恋仲』が古めかしい理由がかいま見えるのかも。
スマホ、SNSが浸透し、1秒前の心の動きまでが「見える化」されてしまう時代。思い立てばすぐに連絡が取れ、昔のような「すれ違い」「障壁」は生まれにくく、相手に対する「妄想」すら膨らます時間を奪われた若者たち。恋愛はドラマチックに盛り上がりにくい時代。そんな中でピュアな恋愛をどう描くのか。どう扱うのか。
「原点回帰」と思考停止するのではなく、「未来に向かって球を投げる」ためにとことん時代を見つめアイディアをひねる必要がありそう。
たとえば前クールで高評価を得ていた『天皇の料理番』は、過去の歴史を描いたドラマでありつつも、たしかに「愛とは何か」を描き出していた。「恋」「愛」だけを抽出して描こう、という無理を「止める」ところから、現代の「恋愛ドラマ」が始まる--そう言えるのかもしれない。でもまだスタートしたばかり。今後の推移を見守りたい。