スポーツ

板東英二氏 甲子園決勝戦直前に監督に400球投げさせられた

甲子園の決勝戦直前に400球を投げたという板東英二氏

 江川卓や松坂大輔、斎藤佑樹など、高校野球史上に輝く名投手たちが挑んで達することができなかったのが、徳島商業の板東英二が持つ大会通算83奪三振の金字塔だ。1958年の夏の甲子園準々決勝、徳島商(徳島)vs魚津(富山)戦は、板東と村椿輝雄の両エースが一歩も譲らず、延長18回を終えても0-0で大会史上初の引き分けに。翌日の再試合で完投勝利を収め、決勝まで進んだ板東氏が“伝説の夏”を振り返る。

 * * *
 魚津との試合は実はそんなにしんどくなかったんです。浜風が吹いて涼しかったし、何より練習では絶対に飲めない水が飲めるから嬉しかった。ただ記者は「疲れた」という言葉が欲しかったんでしょうね。試合後の取材で聞かれたが、僕は正直に「いや」と答え、「記者の皆さんこそお疲れ様でした」と気遣った。そうしたら「板東は生意気だ」と一気にヒール(悪役)にされてしまったんです。

 それから僕が三振を取っても球場は「シーン」ですわ。反対に相手の村椿(輝雄)がゴロでアウトを取ると「ウワァー」と沸く。またこの2人の関係が、対照的でよくできているんです。速球派の僕と、打たせて取る村椿。ムラツバキって名前も綺麗でしょう。こっちはバンドウって盗賊の親分みたいな名前ですからね。

 それに村椿はチェンジになると、ボールをプレートの上にそっと置いて、ダーッとベンチまで走って帰る。爽やか、マナーがいいといわれた。対する僕は三振を取ったら歩いて帰るし、2死で外野フライが上がったらもうベンチに歩き始めていた。これも生意気や、といわれた。

 でもいわせてもらうと、これは僕のせいじゃないんです。監督から「お前しかピッチャーがいないから走って帰ってくるな」といわれていたんですよ。体力温存。だって僕が倒れたらピッチャーがいなくなっちゃうんですから。結局、甲子園で拍手を受けたのは2回だけでした。入場行進の時と、準優勝で表彰される時ですね。

 再試合に勝って進んだ決勝ではクタクタでした。それまで連投に次ぐ連投で全試合完投でしたからね(54回80奪三振)。実は試合前に、監督からいつも「力みを取る」という理由で300球投げてから球場に行き、直前のブルペンでも100球投げるよう命じられていた。あんなことしてなかったらラクに優勝していたと思うんですが(笑い)。

■板東英二(ばんどう・えいじ)/1940年、満州国生まれ。徳島商3年時にエースとして甲子園に出場、決勝に進出するが柳井(山口)に敗れ準優勝。中日に入団、引退後はタレントとして活躍。

※週刊ポスト2015年8月14日号

トピックス

デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
維新に新たな公金還流疑惑(左から吉村洋文・代表、藤田文武・共同代表/時事通信フォト)
【スクープ!新たな公金還流疑惑】藤田文武・共同代表ほか「維新の会」議員が党広報局長の“身内のデザイン会社”に約948万円を支出、うち約310万円が公金 党本部は「還流にはあたらない」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《ほっそりスタイルに》“ラブホ通い詰め”報道の前橋・小川晶市長のSNSに“異変”…支援団体幹部は「俺はこれから逆襲すべきだと思ってる」
NEWSポストセブン
東京・国立駅
《積水10億円解体マンションがついに更地に》現場責任者が“涙ながらの謝罪行脚” 解体の裏側と住民たちの本音「いつできるんだろうね」と楽しみにしていたくらい
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン