茨城県の取手二と常総学院を率いて春夏3度の優勝に導き、歴代6位となる甲子園通算40勝の記録を持つ木内幸男氏。その巧みな選手起用は『木内マジック』と呼ばれた。2011年に監督業を引退した木内氏が、マジックと呼ばれた監督時代の手法を振り返った。
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『木内マジック』とか呼ばれていますが、あれはマジックでもなんでもない。単なる監督の観察力です。子供の長所と短所を見つけ、それをうまく野球に利用しただけ。そのために子供たちの「査定表」を作り、野球の成績だけでなく性格や勝負強さまで書き込んでありました。
それを見て選手を起用したら打つ手が次々と当たった。子供たちには「当たる確率が高いほどお前たちを信頼している証拠」と説明してありましたが、当たって当然。監督がチームを掌握していた結果だと思っています。そのためにずっとグラウンドにいたわけですからね。それで親戚の結婚式にも欠席するなど、家族には思い切り迷惑をかけましたが(笑い)。
サインを出すにしても、「あの子はバントがうまい」「この子はプレッシャーに強い」と全部覚えていて、その子たちを成功率の高い場面で使うのだからうまくいくに決まっています。新聞は“よく決めた”と書きますが、私に言わせれば“この子だから決めた”なんです。マジックでもなんでもなく、できる子にできることをやらせただけです。
グラウンドで野球をするのは子供たち。試合が始まれば選手に任せるしかありませんが、監督が理屈のない任せ方をするのはよくないと思っています。だから私の作戦にはすべて理屈があり、それをベンチで選手にもちゃんと伝えてありました。私はベンチでは監督と解説者を兼務しており、試合中はしゃべりっぱなしでしたね(笑い)。
●木内幸男(きうち・ゆきお):1931年、茨城県生まれ。取手二、常総学院の監督を歴任し、春7回(うち優勝1回、準優勝1回)、夏15回(うち優勝2回、準優勝1回)、甲子園に導く。
※週刊ポスト2015年8月14日号