育てる過程においては、まずこの選手が将来チームを支えていく選手かどうかを見極めることが必要。キャッチャーはケガの多いポジションですから、シーズンを1人で賄えることはほとんどありません。そのため控えを作らなければならないんですが、やはり正捕手という教科書がある間に勉強したり、コーチが教育しなければならない。
私の古巣の巨人でも、今年は正捕手の阿部(慎之助)のファーストへのコンバートが話題になりました。コンバートしたからには次のキャッチャーの目途が立っていたはずだが、阿部を元に戻したりまた一塁にやったりと混乱した。
結局、首脳陣の考えがハッキリしていなかったのでしょう。2年目の小林(誠司)を育てるうえでも、キャッチャーとしていい部分はどこにあるのか、どう伸ばしていくのか。それがハッキリしていれば慌てることはなかった。二軍で育てる判断も疑問。キャッチングの勉強ならいざ知らず、一人前にするなら一軍に置かなければ意味がない。
将来を任せられると思ったら、ベンチはある程度目をつぶって自分で苦しませなきゃならない。苦しんで苦しんで、そこから何かを得ていくんですから。伊東勤にしても、西武時代に「任せた」と言って送り出したら、ベンチからサインは出さず、ゲームを任せました。やはり責任を持たせないと、キャッチャーは上手くならない。それが後進を育てるということなんです。
●もり・まさあき/1937年、大阪府生まれ。巨人V9時代の正捕手として活躍、8年連続ベストナイン、1967年には捕手として初の日本シリーズMVPとなる。引退後、西武の監督として9年間で8回の優勝、6回の日本一に導いた。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号