天皇の「おことば」は宮内庁の事務方が原案をつくり、天皇が目を通し、宮内庁長官らのチェックを経たうえで事前に宮内庁記者クラブで文書配布される。例年、全国戦没者追悼式でのおことばは、前日14日の夕刊締め切り後の午後3時以降に記者クラブに伝えるのが慣例になっている。官邸筋が語る。
「宮内庁サイドは記者発表が遅れることを心配していたが、官邸内では、宮内庁が談話の文面をそこまで気にするのは、陛下のおことばに何かが盛り込まれるからではないかと騒然となった。ちょうど総理は地元の山口に戻っていたため、留守の官邸では判断できず、秘書官が中心になって宮内庁や総理と調整にあたった」
最終的に戦後70年談話が閣議決定されたのは8月14日午後5時過ぎの臨時閣議だったが、宮内庁に最終稿が伝えられたのは「前夜(13日夜)」(官邸筋)だったという。
〈我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました〉
安倍談話はそう現在完了形で「反省」と「おわび」に言及していた。それから天皇のおことばの文案が決定されたため、おことばの文書が宮内庁記者クラブに配布されたのは例年より遅い首相会見(午後6時)後の14日夜にずれ込んだ。
そして翌日の全国戦没者追悼式典の天皇の「おことば」には、初めて「深い反省」の言葉が盛り込まれ、大きなニュースとなった。
※週刊ポスト2015年9月4日号