当初の日本の掃海作業は、米軍ヘリコプターの銃撃によって掃海を終えた後、残存機雷を処分する比較的、危険度の低いものだった。だが、米軍の掃海艇が相次いで触雷したことによって、未掃海面を直接掃海するよう求められた。

 触雷の危険は格段に高まる。そして、日本の掃海隊は17日、運命の時を迎えた。

 指定された掃海海域は旧日本海軍の飛行場があった沖合で、付近の海岸は砂地。上陸に都合が良いだけに、その阻止のため、多数の機雷が敷設されていることが予想された。
 
 ドーン!
 
 午後3時21分、鼓膜が破れそうな大音響が響いた。元山沖に浮かぶ麗島の南西4.5kmの海上で、MS14号が触雷したのだ。
 
 巨大な水柱が天を突き上げた。MS14号の前を航行していたMS03号に乗っていた能勢指揮官は、こうふり返る。
 
「低い轟音と共に私がハッと思って振り向いた時には、煙とも水煙ともわからない薄黒いものが瞬間的に広がり、辺り一面の海面上を覆って何も見えない。その煙がようやく消えて付近が少し見えるようになった時には、既にMS14の姿はなかった。遠くから見ると、木片か人の頭か分からない黒い物が点々として海面に浮かんでいるだけであった」

 MS14号は一瞬にして飛び散った。ほとんどの乗組員が、重油で表面が覆われた海に投げ出された。全23人のうち米軍艇などに引き上げられたのは22人。うち18人が負傷。ただ1人、烹炊(ほうすい)員として乗り組んでいた21歳の中谷坂太郎氏は発見されなかった。
 
 それでも、元山の掃海は続いた。第2掃海隊に代わり、第3掃海隊が作業を引き継ぎ、10月25日には、上陸海岸までの水路掃海を終えた。
 
 このほか、日本特別掃海隊の掃海は12月初旬まで、朝鮮半島の各地で行われ、延べ1200人の隊員が極秘の掃海活動に参加している。特別掃海隊は約2か月間の任務を終え、12月15日に解散した。
 
日本政府は長い間、特別掃海隊出動の事実を隠そうとした。1954年1月の衆議院本会議。特別掃海隊出動について野党議員から追及を受けた吉田首相は「私には、現在記憶がない」と、すっとぼけてみせた。 彼らの活動が公式に明らかにされたのは1978年のことだ。
 
※SAPIO2015年9月号

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