5461件…。2014年度に公正取引委員会が下請け法違反として、企業に対して行った指導件数だ。単純計算で、1日あたり約15件の下請けいじめに“ノー”が突きつけられたことになる。
大企業が優位な立場を悪用し、下請け企業に無理を強いるケースは増えていて、前年を500件以上も上回っている。経済産業省中小企業庁取引課担当者が説明する。
「円安になると、下請け企業が輸入して使う原材料やエネルギーの価格が上がりますが、その差額を下請け企業が“かぶる”ケースがあります。それから、発注側が消費増税分の値引きを求める例もあります」
2014年4月、消費税率は5%から8%に引き上げられた。それにもかかわらず、その3%分を下請け企業に負担させるというわけだ。有名なところでは、プロ野球の広島東洋カープは、そのグッズを作る下請け業者に対して、消費増税分の転嫁を求めていたとして、今年2月に公正取引委員会から勧告を受けている。
下請けいじめは、日本全国で行われている。しかも手口は年々巧妙化し、下請け企業で働くパートやアルバイトにまで波及している。
食品加工会社でパートをしているA子さん(52才)が頭を悩ませているのは、年に2回の“カタログ”だ。
「お中元とお歳暮の時期になると、発注元の企業の通販カタログが1人に何冊も配られます。上司は『うちの仕事につながるから何か買ってほしい』と言ってくるんです。もちろん購入費は自己負担です。周りにも配って“営業”するのは、暗黙の了解になっています」
都内の主婦B子さん(46才)は、大手企業の下請け工場で短期アルバイトをする息子(20代)の手を見て驚いた。
「ものすごく荒れていたんです。息子は素手で部品を洗浄していると言うんです。発注元の企業は手袋での作業を義務づけて、手袋を支給していたそうですが、ワンサイズのみ。サイズの合った手袋がほしいなら、自腹を切る必要があるのだとか。なんておざなりなんだろうと思いました」