スポーツ

ヤクルト・館山 家族と石川雅規の存在がリハビリ時の支えに

ウエイトトレーニングで汗を流す館山昌平

 右肘靭帯断裂の大怪我から2シーズンぶりに復帰した東京ヤクルトスワローズの館山昌平(34)。8月30日の阪神戦では、勝利をあげるだけでなくホームランまでかっ飛ばした。これまでに、トミー・ジョン手術と呼ばれる肘の靭帯再建術を3度経験しているが、辛く長いリハビリ期間、心の支えとなったのは家族──ネイリストの妻・陽子さんと愛娘の海音ちゃんだった。妻との出会いは、館山の爪が割れて治療を頼んだのがきっかけだという。

「ひと目惚れでした。その後もう一度爪が割れて、ケアしてもらうようになってアタックしました。ところが、結婚してからは一度も爪が割れませんでした。不思議なこともあるものです(笑い)」(館山)

 陽子さんは館山の復活の日を信じ続けた。また、館山の肘の傷跡を指さして、「線路みたい」と明るく笑う娘には心底癒されたという。家族の愛情が不屈の精神を支えたのだ。

 さらにもう一人、リハビリへの意欲を掻き立てたのが、チームメートであり1歳年上の石川雅規の存在だった。日大出身の館山と青学大出身の石川は東都大学リーグで投げ合った間柄で、大学時代からの親友だ。

「リハビリ中は、石川さんに本当に気にかけてもらいました。オフの日に(二軍施設のある埼玉県の)戸田まで様子を見に来てくれたこともありました。僕が一軍にいた時はいつも一緒に行動していたし、2人でずっと話をしていました。

『石川さん、最近元気ないんですよ』とか『館山さんを心配するあまり出歩かず、遠征先ではホテルのルームサービスばかり食べています』と、別のチームメートから孤独に戦っている様子を聞くと、石川さんのためにも早く一軍に戻りたいと思っていました」

 石川の存在なくして館山の復活はなかった。ここまでの絆はプロ球界でも珍しいのかもしれない。

「僕は怪我でチームを離れていました。でも、それは大したことではありません。チームに穴をあけてしまったというのは、言い方は悪いけれど、所詮そこまでの選手だということ。

 しかし、石川さんはその間、常に戦っていた。チームを引っ張り続けていた。すごいというか、感謝したいというか……。大学時代に、『石川さんみたいになりたいな』と憧れたまま、今もその気持ちを持ち続けています。

 ライアン(小川泰弘)が、メディアなどでエースと呼ばれることに異論はありません。これから10年先までチームを背負っていく投手。素直に頑張ってほしいと思います。でも、『左のエースは石川で右のエースは小川』と聞くと、ちょっと悲しい(笑い)。いつまでも左の石川なら右の館山でありたい。またそう呼ばれるようになりたいと強く思っています」(同前)

取材・文■田中周治 撮影■藤岡雅樹

※週刊ポスト2015年9月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン