「音や音楽の力というのはとても大事で、『音があれば何とかなる』ということもあるくらいです。お客さんも、ネタが終わった後に『一つの作品を見たな』という気分になりやすい。リズム系のネタは特に、ハマりやすい、覚えやすい、ノリやすいといったメリットがあります。安村さんのあのオリジナルBGMもよく考えて作られた感じがします」(ラリー遠田さん)
わかりやすい芸、わかりやすい見た目、わかりやすい音。狙ってこうなったのか、たまたまこうなったのか定かではないが、芸歴15年、さまざまな苦労を経験した安村だからこそたどりついた境地なのかもしれない。
安村は2001年にアームストロングというお笑いコンビを結成し、いつか有名になることを夢見てきた。2010年にはNHK新人演芸大賞演芸部門大賞を受賞するなど、将来も有望視されていた。しかし昨年、コンビは解散してしまう。安村は芸人を辞めて、故郷の北海道に帰ることも考えた。家には小さな愛娘もいる。それでも安村は、ピン芸人として再出発する道を選んだ。
「安村さんのネタは、ピン芸人になって文字通り『裸一貫で行きますよ』という意気込みが視聴者に伝わったのだと思います。全裸というのは本来、テレビではタブー。やってはいけないことです。でも、そう見えるだけなら許されます。テレビというのは無難なことをしてもつまらないし、過激すぎても視聴者が引いてしまう。そのギリギリのラインがみんなが面白いと思うところで、有吉弘行さんや坂上忍さんがウケているのも、テレビで言っていいことと言ってはいけないことのギリギリのラインで『言葉のタブー』に挑んでいるからだといえます。
『裸のタブー』に挑む安村さんも同じように、モラルの狭間を自由に行き来しながら今のテレビ業界を盛り上げています。裸ネタの需要がひと段落して服を着てからが正念場になると思いますが、高校野球ネタなど服を着てのネタもあるし、トーク力があるのも強みだと思います」(ラリー遠田さん)
今の勢いからして年内は需要が続きそうだが、問題はその後。服を着ても快進撃は続くか?