国内

菅義偉氏 「既に安倍氏の次の総理を探している」との予測も

菅義偉・官房長官

「影の総理」とまでいわれる菅義偉・官房長官の足跡を辿り、ノンフィクション作家の森功氏がSAPIOで連載した「総理の影 菅義偉の正体」。森氏はその最終回で菅氏の人物像とこれからについて、こう言及している。(文中敬称略)

 * * *
 雪深い秋田県の農村から家出同然で上京し、政界に飛び込んだ菅義偉は、順調にその階段を駆け上がってきたといえる。秘書から市会議員、そして代議士として当選回数を重ねてきた政治家としての歩みは、オーソドックスで、さほど劇的なものでもない。ポピュリズムに走って大言壮語や軽口をたたいて墓穴を掘るタイプではない代わり、見栄えもしない。外見的にはありふれた政治家だ。

 しかしその実、菅の周囲にいる個人個人は、独自の地位を築き、キャラクターが立っているタイプが多い。父親の和三郎をはじめ、秘書として仕えた小此木彦三郎や後援者の藤木幸夫、政界で師と仰ぐ梶山静六や理想の官房長官像を抱く野中広務……。スポンサー企業や霞が関の官僚たちとの交友も長く続いている。周囲に張り巡らせたそんな人的なネットワークがあればこそ、地味な政治家が大きく見える。

 菅と親しい関係者たちに、政治家として優れたところはどこか、と尋ねると、決まってこう評す。

「菅さんは道理を重んじ、正攻法で政策を進める。決めた約束を守り、ぶれない」

 もっともそれはある意味、国会議員なら、誰もが備えなければならない最低限の資質でもある。また、たとえば菅は当選一回生で梶山静六を総裁選に担ぎ上げ、その後、加藤紘一の乱にも参戦した。対北朝鮮政策では万景峰号の往来を規制し、NHKの受信料や放送のあり方に異議を唱えた。それらの行動に対し、永田町では「クーデターの仕掛け人」と呼ぶ向きもある。だが、そこにも政治家としてスケールを感じない。菅は何をしたかったのか、それが今ひとつ伝わってこないのである。ある財界人が指摘した。

「菅さんは常々、『私は一代限りの政治家でいい。だから息子にも継がせない』と話しています。本人は総理総裁を目指すわけではない。その意味では、官房長官を天職と考えているのでしょう。そろそろ安倍さんの次の総理を探しているのではないでしょうか」

 菅義偉はフィレンツェ共和国のマキャベリの「弱体な国家は常に優柔不断である」という名言を好んで使う。優柔不断な国会議員だらけの中、ますます存在感が増している。

※SAPIO2015年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン