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田舎暮らしを楽しみつつリスクを軽減させる「参勤交代」とは

 定年後は豊かな自然の中でゆったり暮らしたい、そんな漠然とした夢を描いている人は少なくないだろう。

 事実、大都市部から地方に移住する人の数は年々増え続け、2013年度に自治体の支援策を利用して移住した人は8169人と2009年度の2.9倍に達した(毎日新聞と明治大学地域ガバナンス論研究室の共同調査)。

 少子化に伴う人口減少により、2040年には全国の市町村の半数が消滅するという試算(2014年5月・日本創生会議)もあり、政府も「高齢者の地方移住」に本腰を入れ始めている。

 だが、都市部に住み慣れた人にとって、地方への移住はハードルが高い。マンションを売って地方に家を購入したものの、地方特有の濃密な人間関係に馴染めずに挫折してしまうというのもよくある話だ。

 田舎暮らしを楽しみつつ、「完全移住」のリスクを軽減する。その有効な方法として話題になっているのが「参勤交代」の考え方だ。提唱者である解剖学者の養老孟司氏は、朝日新聞のオピニオン特集「終のすみか」(9月1日付)で次のように語っている。

〈私は「参勤交代の復活」を提言したことがあります。田舎暮らしのススメです。(中略)1年に3カ月ぐらい都会を離れてみるのです。光を浴び、土に触れ、風を感じる。刻々と変化する自然によって五感に刺激を与える。(中略)どこで最期を迎えるかはたいした問題ではない、と思うようになるでしょう〉

 経済アナリストの森永卓郎氏(58)は、実際にプチ参勤交代生活を送っている。

「平日は都心で寝泊まりし、週末は所沢に帰る生活を15年くらい続けています。所沢の家の周りは畑ばかりで自然も豊か。水は美味いし、朝、小鳥のさえずりで起きられる。都心にいるよりずっと人間的な暮らしができるんです」(森永氏)

 郊外ですらそうなのだから、田舎暮らしは自然の豊かさという点では非常に魅力的に映る。しかし、地元の人々との“密すぎる人間関係”は不安要素のひとつだろう。前出・森永氏も、

「地方に行くと人間関係が濃すぎるので、いろいろと面倒臭い。私の周りを見ても、地方移住をして成功する確率は半分いくかいかないかです。都会の人は、近所の人が平気で家の中に入ってくることに耐えられませんから」

 と指摘する。その点、2地域で生活する参勤交代なら地元の人とも適度な距離感が保てるという。

「地元の人から見ると、こっちに家があるから“よそ者”ではないけれど、都会にも拠点があるから完全に“ムラの住民”というわけでもない。その微妙な距離感から、プライベートが保たれやすいんです。田舎になればなるほど、その距離感が有効に作用するのではないでしょうか」(森永氏)

※週刊ポスト2015年10月30日号

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