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2015.11.12 11:00  週刊ポスト

余命3週間の患者 最後の晩餐にお願いした料理が与える影響

ホスピス患者の「最後の晩餐」(玉井さんが食べた天ぷら)

 人生で最後の食事、あなたなら何を食べますか? 大阪の淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院では週に一度、患者が自身の希望する“リクエスト食”を食べることができる。

 ホスピス(緩和ケア病棟)とは末期がん患者が延命治療をせず、残された時間を穏やかに過ごすための場所。このホスピスの患者の平均在院日数は約3週間。つまりこのリクエスト食は“余命3週間”の患者の「最後の晩餐」といえる。

『人生最後のご馳走』(幻冬舎刊)には、このリクエスト食にまつわる14人のエピソードがまとめられている。著者の青山ゆみこ氏が語る。

「週に1回のリクエスト食があることで、“今度はあれが食べたい”と前向きな気分になり、生きる意欲が湧く方もいました。私がこの本で伝えたかったのは、“最期まで幸せに生ききることができる場所がある”ということです」

 すい臓がんを患って入院した玉井和代さん(74)がリクエストしたのは、天ぷらだった。

「彼女は天ぷらを食べると、楽しかった家族との暮らしを思い出すそうです。玉井さんが天ぷらを揚げると息子たちが次々に食べてしまうので、自分は台所に立ちっぱなし。でも、台所から見る家族の食卓こそが幸せだった、と彼女は感じているようでした」(青山氏)

 直腸がんの末期患者、竹内三郎さん(70)は、コロッケとスパゲティを希望。コロッケは25歳の頃に食べた、じゃが芋だけのシンプルなもの。「貧しかったこともあり、安くて旨いものが好きだった」という。

 スパゲティは、九州から大阪に出てきた20歳の頃に、勤務先の喫茶店で作り方を教えてもらった。

「甥っ子に作ってあげたところ、“美味しい! また作って”と感激されたようです。離婚を経て家庭を持たなかった竹内さんにとって、家族を感じられた瞬間が記憶に強く残っていたのかもしれません」(青山氏)

 調理をするのは一流ホテルや料亭で腕を振るった熟練の調理師。お皿はプラスチックではなく陶器にするなど、様々な工夫がなされている。

 このホスピスの成人病棟は15床ある。うち7床は広めの部屋で入院費は1日1万5000円。残りの8床は基本タイプで料金は無料だ。青山氏が語る。

「食費は1日数百円程度と安価に設定されています。このような取り組みをしているホスピスは全国にほとんどありません。今後、食事のケアが充実したホスピスがもっと増えることを願っています」

 患者の希望を叶える「最後の晩餐」は、終末期医療のあり方にヒントを与えてくれそうだ。

撮影■福森クニヒロ

※週刊ポスト2015年11月20日号

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