「安倍政権は表向きは“少子高齢化の中で年金財政が逼迫しているので株式投資を増やし、運用益で年金積立金を増やす”と説明していましたが、実際の目的は年金を増やすことよりもむしろ“株価のつり上げ”にありました。140兆円の4分の1といえば35兆円。それだけ日本株を買えば、当然、株価を上げることができます。安倍政権は来年、とても重要な参院選を控えています。株価が上がれば、政府・自民党の経済政策『アベノミクス』は成功したと宣伝できて、選挙に有利です。だから、年金積立金を株式市場に投入して、株価を上げたかったのです」(相沢さん)

 そうして、GPIFは私たちの年金を使って株を買い進めたが、今年8月下旬からの世界同時株安の影響で、株価が下落してしまった。

 日経平均株価は2万1000円まで上がったが、一時、1万6000円まで下落。当然、年金積立金で買っていた株も値下がりしたはずで、あるシンクタンクが損益を試算したところ、約10兆円のマイナスだったというのだ。

 大半を日本国債で運用していれば、これほど大きなマイナスにはならなかったはず。今回の10兆円という巨額の年金消失は、安倍政権のギャンブル投資の副作用ともいえる。

 一方で、一時的な株価の変動で一喜一憂すべきでないという意見もある。実際に、アベノミクスによる株価の上昇で、GPIFは2013年度に約10兆円、2014年度に約15兆円の運用益を上げた。だが、今回はたった3か月で10兆円のマイナスである。相沢さんが続ける。

「今はまだ10兆円の含み損で済んでいますが、今の株高がいつまでも続くわけがない。2020年の東京五輪までもてばいいほうで、外国人投資家が売り逃げれば、もっと早く株価は下がるでしょう。リーマン・ショックの時、当時の運用比率では8兆円の損失で済みましたが、現在の比率ではその3倍の26兆円のマイナスになるといわれています」

 GPIFによる正式な発表は11月末に行われる予定だが、発表と同時に世間に衝撃が走ることは間違いない。

「手堅い信用を望む国民も少なくないはずです。それなのに安倍政権は国民に対し、“極端に言えば将来、みなさんの年金が3割減ることもありますよ”ときちんと説明をせず、国民の合意が得られないまま、勝手に運用方法を変えてしまった。これは大問題だと思います」(相沢さん)

※女性セブン2015年12月3日号

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン