レース展開からも、強さはうかがえる。渡邉(利)は一時、久保田の前に出てトップに立ち、最後まで先頭集団に絡んだ。今年の箱根で3区を走った選手だが、これは原晋・監督の「まさかの起用」といわれていて、本人も周囲も当日のエントリー変更で外れるのではと思っていた(実際は区間5位の好走)。それが主力級にまで成長した。
その渡邉をラストで追い抜いたのが、下田、中村という2年生だ。下田は全日本で区間賞、中村は世田谷246ハーフ(11月8日)で優勝と勢いに乗っている。記録会ではゴール後に下田や中村が笑顔で「差しきりましたよ!」と声をかけ、渡邉が苦笑いを浮かべるなどチームの雰囲気はいい。
こうなってくるとメンバー選考に興味が湧く。10月の出雲駅伝で5区を走った山村隼(4年)は、この日トップだった久保田と熊本・九州学院高校陸上部の同期。2年時に久保田が故障した時、山村がサポートして復活を果たしたエピソードはファンの間ではよく知られているが、実はこの2人は高校時代を含めて襷(たすき)リレーをしたことがない。
最後の箱根での実現を願うファンは多いが、学連記録会での山村のタイムは29分25秒(同組24位)。メンバーに入るかは微妙になってきた。出雲駅伝後の「2チームで出ても1、2位になれた」との原監督のセリフも、あながちビッグマウスとはいえない。
【プロフィール】西本武司:1971年福岡県生まれ。メタボ対策のランニング中に近所を走る箱根ランナーに衝撃を受け、箱根駅伝にハマってしまう。一年中いろんなレースを観戦するうちに、同じような箱根中毒の人々とウェブメディア「EKIDEN News」を立ち上げる。本業はコンテンツプロデューサー。
※週刊ポスト2015年12月11日号