では、実際にたばこ休憩は「職務専念義務違反」にあたるのか。当サイトでは人事ジャーナリストの溝上憲文氏に聞いた。
「もちろん労働契約で勤務時間はきちんと定められていますが、職務専念義務違反行為にあたる離席理由や時間が定義されているわけではありません。
特に許容範囲が広い正社員の場合は、たとえば子供の学校送迎で30分出社するのが遅れることになっても、会社に報告すれば30分相当の給料を引かれることはないでしょう。また、昼休みの外食で注文したソバがなかなかこず、会社に戻るのが1時20分になっても、誰も咎める人はいないでしょう。多少の時間なら周囲も暗黙のうちに認めているのです。
もし、勤務時間を厳密に管理しようと思えば、職場の就業規定に離席理由を細かく明記し、詳細な記録を取ったり、書面による届け出制にすればいいのですが、そんなことをしたら仕事のフレキシビリティが欠けますし、社員のモチベーションや生産性にも影響してくるでしょう」(溝上氏)
そもそも、いくら机に座っていても、私語が絶えなかったり、職務と関係のないネットサーフィンをしたり、スマホゲームに勤しんだり……とサボッている社員はいるはず。これらの行為も立派な職務専念義務違反ではないのか。
「もちろん該当します。会社のPCでネットサーフィンをしているのであれば、会社の財産を私的に流用したことになるので、たばこ休憩より罪が重い。
喫煙所では他部署の人たちとの“タバコミュニケーション”により、新しいアイデアや企画が生まれることもあります。そういう意味では、たばこ休憩が必ずしも会社の生産性向上や業績アップにマイナスになるとはいえません」(前出・溝上氏)
ミヤネ屋の放送は「ちゃんと仕事をやればいいだけ」という結論で幕を閉じたが、そこはシビアに捉える必要があると、溝上氏も同調する。
「職場のチームワークも大事ですが、基本的には勤務時間内に個人がどれだけ成果や業績を上げられたかどうかが問われるべき。そこをはき違え、目くじらを立てて時間管理を徹底すれば、ギスギスと歪な職場になってしまいます。
喫煙者も周囲に迷惑をかけるほど、たばこ休憩を頻繁に取るのは控えなければなりません。『1回1本5分』などと自分でルールを決め、1時間の昼休みを毎日30分で切り上げ、残りの30分をたばこ休憩に振り分けるなど、工夫してほしいと思います」(溝上氏)
たばこに限らず、休憩やサボり時間が増えれば増えるほど、仕事の効率が上がらなくなるのは当然。その自覚がない人は、周囲に咎められるまでもなく、結果となって跳ね返ってくるだけだ。