「売れない新人バンドとか、勝手にあれをコピーしてアルバム作ったらいいと思うよ。『作詞・作曲=どうやら所ジョージらしい』と書いてあったら、それだけで面白いから許す。若い頃は権利を自分で守らないと芸能の仕事は成り立たないと思っていたけど、この歳になったら権利なんか放棄したほうがカッコいい。
下町で工場やってるおじさんたちと付き合ってみてそう思ったんだよね。あの人たち、すごい技術や才能があるのに、ドンブリ勘定なんだよ。本人は当たり前にできちゃうから、どんなにすごいものを作ってくれてもおカネを受け取ろうとしない。だから何か頼んでも、1升瓶の酒1本も持っていけばやってくれたりするの。
で、それ飲みながら“なんで儲からねぇんだ”とか愚痴ってるんだけどさ(笑い)。それも含めてカッコいいんだよ。あとさ、もう終わった仕事の権利なんかに引っかかってると、次の仕事がおおらかな気持ちでやれないじゃない? それが嫌なんだよね。やりたいことは次々と出てくるからさ」
そのせいか、“一発屋”で終わりがちな若いお笑い芸人を見る目は厳しい。
「新しいものを作らずに1つのネタにしがみつくのは芸能じゃないと思う。その1つを作れたのはすごい能力なんだから、同じ手順で考えればもっとたくさん作れるはずでしょ。100個作ってから世に出てくればいいんだよ」
◆所ジョージ(ところ・じょーじ):1955年1月26日生まれ。埼玉県出身。『所さんの目がテン!』(日本テレビ系、日曜7時~)、『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』(日本テレビ系、水曜19時56分~)など8本のレギュラー番組に出演する。CDアルバム『JAM CRACKER MUSIC 3』が発売中。
撮影■桑島智輝 取材・文■岡田仁志
※週刊ポスト2015年12月18日号