空気が読めない人は、それだけで罪になるわけではない。自分が会社や顧客など周囲の人たちからどう見られているのか、客観視できないことが問題になる。類似の性格として人事担当者は「自分がどう見られているか気づかない人」「おっとりとしていて、呑み込みが遅い人」「いつも話のピントがずれている人」――を挙げている。
こういう人は顧客の思いや意向を把握し、それに合致した商品やサービスなどの提案をすることができないと見なされてしまう。たとえば会議では、ビジネスのなんたるかを知らない新人ならピントがはずれていても積極的に発言することは許される。だが、30代以降になると「その場の雰囲気を踏まえずにムダな時間をつくってしまう社員は評価を下げる」(中堅電機メーカー社長)という。
会話ができない人、表現下手な人の事例として人事担当者は「自分の意見を求められても言えない人」「何も言えないのに反抗心だけはある人」「コミュニケーションをとれない人」を挙げている。
もちろん、口が達者でなければ受注できない営業職は務まらないだろう。会話下手、表現下手は研究・技術系の若いエンジニアに比較的多い。だからといって彼らがリストラ候補者になるわけではない。表現力よりもエンジニアとしての才能があれば生き残れる。
だがいつまでもコミュニケーション力が低いとリストラされる可能性もある。精密機器メーカーの人事課長は、
「事業の見直しで人員の異動を行うことがあるが、最も配置先に苦労するのが技術系の社員だ。研究一筋できた社員は口数が少ないし、対人関係もそれほど得意ではない。営業系の部門に配置すると、部門長から『なんでこんな人間を寄越したんだ』と必ず文句が出る。使えなければ最終的に希望退職募集を使って辞めてもらう」と語る。
コミュニケーション力がないがゆえにリストラされる人もいる。しかし、自発的に学習していけば身につくものだ。また、これまで述べた性格の人は入社時点からそうだったわけではない。
多くの人は仕事を通じて目標の喪失など会社人生の中で挫折を味わったことが引き金になっているのではないか。だが、そうだとしても会社が救いの手を差し伸べることはない。自らの力で這い上がるしかないのである。
●文/溝上憲文(人事ジャーナリスト)