芸能

映画俳優の序列は間違えたら揉めるもの 厄介なのはW主演

 華やかな「銀幕」の裏には、俳優たちを格付ける明確な序列がある。浮き沈みの激しい人気商売ならではのシビアなしきたりを、映画批評家の前田有一氏が有名作品の事例を通して繙く。

 * * *
 日本の映画界では、伝統的に俳優の序列が厳しく守られてきた。高倉健や菅原文太が大活躍した1950~1960年代は、東映や松竹などの映画会社に、俳優が所属していた時代。

 当時は会社の影響力が強く、会社側がその実績や会社への貢献度で俳優をランク付けするのが習わしだった。トップスターとなった後の高倉健でさえ、東映では先輩の鶴田浩二より上の扱いを受けることはなかった。

 そうした序列は、作品の最後に流れるエンドクレジットなどで、いまなお厳格に守られている。観客はあまり意識することはないだろうが、映画関係者はここに注目する。その順序を間違えたら、もめる要因になるからだ。

 特に厄介なのは「ダブル主演」の作品。アメリカでも事情は同じで、例えば往年の2大スター、ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンの2人が主演した『タワーリング・インフェルノ』(1974年公開)では、クレジットやポスターでの序列を巡り大いにもめたという。

 画面左に表示されるのが格上なのだが、マックイーンを左に配した代わりに、右のニューマンを少し上にずらして表示する、という苦肉の策を講じた。これにより双方からクレームが出ないようにした。

 日本でもエンドクレジットでは、最初に登場する人物が主役で、最も格上だ。その後、準主役級が2番目、3番目と表示され、さらにその他の出演者が続く。途中、間隔を空けたり、線で仕切られるなどして「ピン扱い」される中堅役者もいる。最後は、出演者の中でも特にベテランの大物が表示されるのが慣例だ。

 これはもともと「一枚目=主役」「二枚目=色男」「三枚目=道化」「トメ=座長」というように、並び順が序列を示した歌舞伎の「看板」の順序を踏襲したものである。

 また、オールスターキャストが多い脚本家・三谷幸喜の映画作品では、エンドクレジットが五十音順や登場順になっていたりする。三谷作品は大物が多数登場する、いわゆる「グランドホテル」形式が多く、序列をつけるのが難しいからだと思われる。

※SAPIO2016年1月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン
モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン