あれは1989年のオフのこと。いきなりヤクルトの相馬和夫社長がやってきて「監督をやってほしい」といわれた。私はパ・リーグの人間だからセ・リーグの野球は知らない。何故私なのですかと聞くと、「野村さんの解説を聞き、新聞の評論を読んでこれが本当の野球だと感心した。うちのバカどもに本物の野球を教えてやってほしい。チームがうまく行かなければ私も責任を取る」といってくださったのだ。

 これが就任の決め手となった。結局、優勝させるのには3年かかってしまったが、見事優勝した時には相馬社長が飛んできて私の両手を握って放さなかった。その感触は今でも忘れられない。私がヤクルトの監督になったのも、解説という「言葉」がきっかけだったのだ。

 さて、果たして高橋、金本らにその「言葉」があるだろうか。現役時代のヒーローインタビューを聞いている限りでは、ない。ラミレスに至ってはパフォーマンスしかしていない。だから心配なのだ。

 そもそも既存の監督の談話も聞いていてうんざりするものばかりだ。巨人の原辰徳・前監督の話など、聞けば聞くほどイヤになった。良いことをいいたい、ウケを狙いたい……そう思って易しいことをわざと難しく表現して、自分を利口に見せようとしていた。自分が目立ちたいという野心が見え見えだ。だから余計薄っぺらく感じた。真中満(ヤクルト)や工藤公康(ソフトバンク)にしても、言葉が軽すぎる。

 説得力、そして重みのある「言葉」を発し、選手から「信」を得られるかどうか。監督業とはそれに尽きるのだ。

※週刊ポスト2016年1月1・8日号

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