あるいは、人気急上昇中のディーン・フジオカが演じる五代友厚という人物もそう。「東の渋沢(栄一)、西の五代」と並び称され、大阪経済の牽引役だったという五代は、「上に立つ者の5ヶ条」を残している。
・愚説愚論だろうと最後まで聞く。
・地位の低いものが自分と同じ意見なら、その人の意見として採用すること。手柄は部下に譲る。
・頭にきても大声で怒気怒声を発しない。
・事務上の決断は、部下の話が煮詰まってからすること。
・嫌いな人にも積極的に交際を広めること。
当り前のようでいて、今だってなかなか実現できないこと。商売とは、えてして倫理を無視して欲に突っ走りがち。自分自身のブレーキとして、精神性や哲学を身につけなければ--かつての大阪商人たちはそう自覚していたのだろう。
歴史ドラマといえば、戦国武将に維新の志士と、きな臭い戦いに偏りがちだった。そんな風潮に今、『あさが来た』が風穴を開けようとしている。商売や町の暮らしを細やかにリアルに、より深く描く中から、時代と人々の挌闘ぶりを浮き彫りにするドラマの魅力に、みんな目覚め始めた。
さて、今年の「商い」ドラマとして、まずは1月3日、『百年の計 我にあり~知られざる明治産業維新リーダー伝~』(TBSひる 12時)が登場してくる。
江戸初期から続いてきた銅商・住友が、近代化の波の中で企業に脱皮していく激動のプロセス。いかにイキイキと深く、人と時代を描き出すことができるか。あえて「ドキュメンタリードラマ」と銘打っているあたりにも、チャレンジの気配が漂っている。
いよいよ2016年、ドラマ界に「商いが来ている」。