ビジネス

ニトリ社長・似鳥昭雄とは何者か 佐野眞一がその正体に迫る

似鳥昭雄・ニトリHD社長

 北海道のローカル家具屋は、あれよあれよという間に、日本の流通業界の雄に上り詰め、いまやスウェーデン発のグローバル企業IKEAと熾烈な争いを繰り広げている。ニトリHD代表・似鳥昭雄とは何者か。ダイエー中内功氏やソフトバンク孫正義氏ら異形の経営者と対峙してきたノンフィクション作家・佐野眞一氏がその正体に迫る。

 * * *
「♪お、ねだん以上。ニトリ……」

 一度聞いたらなぜか忘れられなくなるこのテレビCMを最初に聞いたとき、この会社はきっと伸びるぞ、と思った。

 その後、ニトリという社名が創業者の名前からつけられたものだと知って、その思いは確信に変わった。

 私は、ノンフィクションは取り上げる人物の名前でほとんど決まると思っている。それと同様、企業が成長するかどうかは、創業者が先天的に持っている「星の強さ」で決まる。似鳥昭雄。実に“破壊力”のある名前ではないか。

 ニトリの名前は、昨春、日経新聞に連載した「私の履歴書」で、俄かに有名になった。これを単行本化した『運は創るもの』はまもなく4万部を超えるという。業績も好調で、2015年の2月決算で28期連続の増収増益を達成した。国内店舗数は370店を数え、売上高は4000億を超える。目標は3000店、売上高3兆円である。

 ニトリは一般的に家具の専門店チェーンだと思われているが、家具の売り上げ構成比は41%。残りはインテリア雑貨などが占める。東京都北区にある東京本部は店舗も兼ねている。インタビュー前その店内を見学して、無印良品の商品構成にそっくりだと思った。

──♪お、ねだん以上。ニトリ……というコピーは、誰が作られたんですか。社長ですか。

似鳥 「あれはうちの社員に募集して、100くらい集まったなかから決めたんです。最初は♪お、ねだん以上、それ以上……だったんですが、『それ以上』は長すぎるから切りました」

──ニトリが家具の専門チェーンでないことは、店内を見学してよくわかりましたが、衣食住でいえば、“住”に特化した商品構成であることは確かです。なぜ、住をターゲットにして創業(1967年)したんですか。

似鳥「競争相手がいない業種を探したんです。いろいろ調べた結果、家具屋だけがなかったんです。先輩たちからも、これからは住宅がどんどん建っていくから、カーテンとかカーペットとかそういうものが売れるぞ、という話を聞いたのもヒントになりました」

 似鳥が「住」関連の商品に目を付けたのは、たぶん引き揚げ体験と密接に関係している。戦後の貧しい時代でも、「食」はそこそこあったし、文句さえいわなければ「衣」もあった。  言葉を換えれば、似鳥は寒い日には家の中に雪が吹き込む貧しい引揚者住宅体験を、いわば逆手にとってビジネスチャンスをつかんだのである。

似鳥「もう、まったくこんなに成功するとは、夢にも思いませんでした」

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン