「あの時、家の中に積み上がっていた物が一気に降ってくるという恐怖を経験しました。物が凶器になり、“この家に殺される”と本気で思ったんです。自宅は全壊に近く、避難道具を持ち出そうにも物があふれかえっていて、どこに何があるかわからない。“この家は絶対安全だから出たくない”という祖母を引っ張って家の外に出た瞬間、またいろんな物が上から降ってきて本当に危なかった。その時、“二度とこんな家に住みたくない”と心から思ったんです」
この時の経験から、とにかく物を少なくすることを決意したまいさん。結婚後、夫とのマンション暮らしを経て4年前に現在の自宅を新築し、また祖母と母と暮らし始めた。そこでは物を少なくするためにずいぶんと「暴走」したという。
「ここに引っ越してきた当初がいちばんピリピリしていて、常に“そこに物を置かないで!”などと家族に注意していました。この時の私は完全に『物を捨てたい病』を発症していました。また以前のような汚家(おうち)に戻ってしまうのが怖かったからです。家族には『鬼軍曹』に見えていたようです」(まいさん)
当時のまいさんは、通常なら大切にされる思い出の品にも容赦なかった。小学校から大学までの卒業アルバムを「いざとなったら友達に見せてもらうか、母校に行けばいい」とすべて捨てた。結婚したときも、それまでずっとつけていたペアリングを捨ててしまった。
「“結婚指輪があるからいいんじゃないか”と、結婚指輪が届いたその日にペアリングを捨てました。もう一生つけることのないペアリングを持ち続けることが我慢できなかったんです。余分に思える物を自分の身の回りに置いておくことが不快で、そんな自分を許せなかった。祖母が物持ちのいい生活をしていたから余計に“物嫌い”が加速したのかもしれません。
ペアリングを捨てたことを夫に告げたら、“またまた、いつもみたいに冗談でしょう。ぼくは信じないよ”って言われた。本当だとわかったときは『やるだろうなと思った』と苦笑いしていました。友人からはあきれられました」(まいさん)
この話を知った母親も激怒。その後、半日口をきいてもらえなかったという。
※女性セブン2016年2月11日号