香港では最も古い親中国系紙である「大公報」と「文匯報」の親会社が2月初旬に合併した。歴史はあるものの、両紙とも人気がなく、香港での部数は低迷。正式な部数は公表されていないが、「両紙あわせて1万部もないのではないか」(香港のメディア関係者)といわれており、この合併は近い将来の両紙の統合の布石との見方が強い。
ネット上では「まったく読まれていないから、二つが一つになっても世論にはまったく影響がない」との辛辣なコメントが書き込まれている。
合併された企業名は「香港大公文匯伝媒集団」というもので、大公報の姜在忠社長が新たな集団の社長に就任、文匯報の副社長だった馮瑛冰氏が同集団の副社長代理に就いた。
文匯報の社長だった王樹成氏は退任することになった。王氏は昨年10月、中国共産党機関紙「人民日報」の編集委員兼「人民日報海外版」の総編集長から文匯報社長に就任したが、わずか3か月あまりでの退任で、当初から両紙の合併のために香港に派遣された可能性が高い。このため、合併した同集団は今後、大公報主導で再編が進みものとみられる。
実際的にみても、文匯報よりも大公報の方が断然、歴史が古い。大公報は1902年、中国天津市で創刊され、すでに114年の歴史をもつ。当初は北京や上海や重慶、香港で発行していたが、1949年の中国共産党政権誕生後、中国内では合併などにより大公報の名前は消え、香港だけで発行されるようになった。
文匯報は1939年上海で英国人によって創刊されたが、その後、親共産党系の新聞となり、新中国建国の1年前の1948年に香港で新聞を発行し、今に至っている。
香港の新聞のなかでは、両紙の歴史の古さが群を抜いているが、部数は低迷している。1995年6月に創刊で「反中」を明確に掲げる「リンゴ日報」が30万部なのに対して、両紙合わせて1万部もないとされる。
香港の中国筋は「今回の合併は、中国共産党政権による報道界へのテコ入れであり、中国政府の政治的な圧力が一層、強まることは避けられないだろう」と指摘している。