サウジは、国際オイルマーケットで主導的役割を演じ続けることが国益と考えている。米国によるシェール・オイル開発をはじめとする代替エネルギーの開発を阻止し、原油価格決定の中心的プレイヤーとしての地位を確保することが、サウジの戦略だ。
さらにサウジが石油安を誘導する要因が増えた。国際社会によるイランに対する制裁の解除だ。
サウジの原油生産費は、イランよりも安い。経済制裁が解除され、原油を販売することでイランは外貨を得て石油関連施設の設備を更新することを考えている。
それを阻止するためにも、サウジは、原油の減産に応じず、安値を維持し、イランへの利益を極少化すべく腐心するであろう。
【PROFILE】1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。SAPIOで半年間にわたって連載した社会学者・橋爪大三郎氏との対談「ふしぎなイスラム教」を大幅に加筆し『あぶない一神教』(小学館新書)と改題し、発売中。
※SAPIO2016年3月号