ライフ

芥川賞受賞の滝口悠生氏 昔から「謎の自信があった」と評される

【著者に訊け】
滝口悠生さん/『死んでいない者』/文藝春秋/1404円

【内容】
30人ほどの親類たちが、大往生を遂げた故人の通夜に集まった──夜を掬い取った第154回芥川賞受賞作。顔の部分部分がどこか似ている老若男女がそれぞれの距離感で故人を想い、家族の記憶を手繰っていく。「この作品は仕事を辞める前に書いた最後の小説で、引き継ぎなどでかなり忙しい中、書いていました(笑い)」(滝口さん)。

 芥川賞を受賞した『死んでいない者』は、通夜の夜に集まった親戚一同の物語だ。「物語」と呼ぶほど特別な何かが起こるわけでも、刺激的な言い回しがあるわけでもない。が、ちょっとしたシーンや会話がいつまでも心に残る不思議な作品だ。

「全体でどうかということはぼくにとってさほど重要ではなくて、読者がよかったと思える部分が、いろんなところに散らばっている方がいいと思っているんです。部分部分が最後、ひとつに収斂していくのではなく、途中は途中のままでいい。書いているときに、こう書けば格好よく決まるなと思うときもあるのですが、すでにある感情に小説を流し込むことになるのでしたくない。それよりも、よくわからないけど何かしらではある、みたいな感情や雰囲気がぼやーんと残る方がいいな、と」

 どこか冷めたような、突き放したような物の見方は、高校時代からのもの。所沢高校在学中、一部の教師や生徒が国旗掲揚・国歌斉唱に反対し、世間でも話題になった。

「ぼくはどっちでもよかった。どうでもいいということでなく、それをやるかやらないかの議論に終始してしまうのは退屈だった。ちょっと真ん中の丸がずれてる国旗を掲揚したり、わざと音程を外して君が代を歌ったりしたら、それはどうなのかなとか、誰か気がつくのかなとか、ひねくれた考え方をしていましたね。単純な二項対立に落とし込むのではなく、いろんな考え方のバリエーションがあっていいと思ったんです」

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン