人生には様々なトラブルがつきもの──散歩ばかりしているという作家で劇団「鉄割アルバトロスケット」主宰の戌井昭人氏の週刊ポスト連載「なにか落ちてる」より、不意の侵入者にどう対処すると効果的なのか、体験談を交えてお届けする。
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寝ているときに、自分で「うわーおー!」と叫ぶ声で目を覚ましました。以前は、大笑いしながら起きたこともあります。
なぜ、「うわーおー!」と叫んだのかは、自分が、お化けのフリをして、階段をのぼっていた人間を脅かそうとしている夢を見ていたのでした。
それにしても、「うわーおー!」なんて叫んで、人間を脅かすお化けが、存在するのかどうか、よくわかりません。けれども、それが自分なりの、お化け表現だったのです。そして、自分で出した大声に驚いて、起きてしまったという有様なのでした。
そもそも、どうして、わたしはお化けのフリをしたのか。そのときは、芝居小屋のような建物で、守衛のようなことをやっていたのです。
守衛といっても、布団を敷いて、ただ寝ているだけの見張り番だったのですが、そこに侵入者がやってきたので、どうしたら良いのかわからなくなった自分は、お化けのフリをして、侵入者を追い返そうとしたのです。
侵入者に向かって、「おい、なんだお前は!」とか「出ていけ!」「テメエこのやろう!」などと言って、相手に刺激を与えるならば、お化けのフリをして追い返した方が、得策だと思ったのです。
なぜなら、お化けだったら、相手も攻撃してこないし、人間同士ではないので、馬鹿らしくなって、逃げていくだろうと思ったのでした。まあ、夢の中だったので、良かったのですが、このようなことが、実際にもありました。