国内

連載【大川小の今】第3回 子供の意見を聞くのは大事

「大川小をぜひ見に来てほしい」と語る生存者の只野哲也さん

 2011年3月11日の津波で、全校児童108人のうち74人が犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校。只野哲也さん(16才)はその生存者だ。悲しみの癒えぬ5年の歳月を、長く大川小について取材を続けるジャーナリストの加藤順子さんと池上正樹がリポートする。(撮影:加藤順子)
【集中連載第3回/全4回】

 * * *
「家に帰ると、ふとした拍子に(母親や妹が)亡くなったことを実感してきて寂しいと思ったり。考え出すと止まらなくなるんです」(哲也さん、以下「」内同じ)

 震災後、何もかも消えた故郷を出て、市街地に引っ越した。進学した中学校や高校は大川小とはあまりにも環境が違い、同じ市内でも震災の話をすることはなくなった。

「友達がきょうだいの話をしていると、『自分に話しが振られやしないか』とびびったり、天気の悪い日に『お母さん迎えに来るの?』と聞かれ、『ああ、おれんちも“親”が迎えに来るよ』とうまくごまかしてみたりしていますね。親がいないという本当のことを言ってもいいが、相手にとりあえず謝られたりすると傷つくので、そっとしてほしい。そんなことを通じて、少しずつ、少しずつ、家族がいないんだなって感じていますね」

 田んぼのなかの自動販売機すらない地域で育っただけに、市街地で生活するなんて思ってもいなかった。

「震災後は、子供ではいられない感じもあって、こっちに来てから自分を作っている感じがするけれど、本当の自分はどっち?ってわからなくなってきているんです」

 2012年8月、大川小保護者説明会で、現在の校長が「子供の記憶は変わるもの」と発言した。しかし、哲也さんの証言内容は、私たちが話を聞いてきた中ではもちろん、報道をみる限りでも、変わるどころか一貫し続けている。

「校舎を壊すのは、世界中の子供たちが見てからにしてほしい」

 そう訴え続ける強い思いの源泉には、虚ろな大人社会への不信が滲む。

「自分の母校だし、友達がいた。記憶が薄れていく中であの校舎がなくなったら、ただの更地になっちゃって、思い出せることも思い出せなくなる。校舎があるからこそ、この廊下で怒られたなとか、階段で転んだなとか思い出せる。思い出すきっかけがないと、いくら頑張っても忘れちゃう。みんなが生きていた証がないとだんだん忘れられて本当の意味で死んじゃうんじゃないか」

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚を発表した長澤まさみ(時事通信フォト)
《トップ女優・長澤まさみの結婚相手は斎藤工と旧知の仲で…》インスタ全削除の“意味深タイミング”
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「クマが人里に降りてくるのは必然」「農業は野生動物に対する壮大な餌付け」 知床・ロシアでヒグマを撮った動物写真家が語る “現代の人間に欠けている自然観”
NEWSポストセブン
11人家族の宮前家
《子ども9人“大家族のパン屋さん”》「店員さんが注文を覚えきれなくて(笑)」11人家族のインフレ“金銭事情”と、大人数子育てで培ったこと「マニュアル本は役に立たない」
NEWSポストセブン
長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
インフルエンサーのぴきちんさん(Instagramより)
《2年連続ポストシーズン全試合現地観戦》大谷翔平の熱狂的ファン・ぴきちん、全米巡る“体力勝負”の脅威の追っかけはなぜ可能なのか
NEWSポストセブン
2024年に『ウチの師匠がつまらない』を上梓
「視聴率とれたらオレのおかげ?罰が当たるよ」三遊亭好楽さんが『笑点』メンバーや裏方に愛され続ける“お客さんファースト”  地方営業で土産を爆買いも
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン