ビジネス

ドーナツ専門店は本当にコンビニに浸食されたのか

撤退相次ぐクリスピー・クリーム・ドーナツ

 ドーナツといえば、いまやお菓子の定番としてだけでなく、スイーツや朝食代わりに食べる人が増えるなど根強い人気を誇る。米国発の人気チェーンが続々と日本進出を果たすなど専門店の競争も激しく、その市場規模は1177億円にのぼる(2014年/富士経済調べ)。

 だが、そんなドーナツ業界の勢力地図に異変が起きている。2006年の参入以降、行列必至の専門店として約60店まで拡大させてきた「クリスピー・クリーム・ドーナツ」(創業は米国)が、あちこちで撤退を始めている。広島、京都、福岡……立地のいい東京でも閉店を余儀なくされる店舗が出ている。

 苦境の大きな原因とされているのが、コンビニの台頭だ。フードアナリストの重盛高雄氏がいう。

「コンビニは100円の淹れたてコーヒーが成功したように、揚げ物やおでんなどカウンター周りの商品が好調です。1か所でいろいろな商品が揃うワンストップショッピングの利便性もさることながら、“自分へのご褒美”でつい買ってしまう『コンビニスイーツ』という新たな文化も確立させました。ドーナツもプラスアルファの相乗効果が期待できる商品として強化しているのです」

 コンビニドーナツは2014年10月からセブン-イレブンが専用什器で販売を開始したのを皮切りに、2015年にはローソンが追随。その他、ファミリーマートやサークルKサンクスも品揃えを充実させてきた。特にセブン-イレブンは今年度の売り上げ目標を専門店市場の半分にあたる600億円に定め、コーヒーとのセット割引で販売攻勢を強めてきた。

 しかし、コンビニが本当に専門店の市場まで奪っているかというと、必ずしもそうではない。「セブンが今年に入ってドーナツの品質の刷新させたのは、想定した販売数に届いていないから」(業界関係者)との指摘もある。

 確かに、専門店と比べるとコンビニドーナツには不利な点が多い。

「ドーナツは〈会社の同僚に差し入れするならコレ〉〈ママ友と店内で食べるならコレ〉〈持ち帰って食べるならコレ〉と、食べるシーンや気分によって選ぶ種類も変わるもの。そう考えると、歴史が古く商品数の多い『ミスタードーナツ』のほうが安定感はあります。

 また、コーヒーと一緒に出来立てのドーナツを味わうイートイン(店内飲食)にしても、店の片隅にある狭いスペースで紙コップのコーヒーを飲みながらのコンビニに対し、ミスドは皿の上にドーナツを置き、専用カップに注がれたコーヒーはお替わり自由。このスタイルの違いは大きいと思います」(前出・重盛氏)

 全国に1300超の店舗を抱え、シェアトップを独走するミスドでさえ、ライバル専門店の出現や他のスイーツへの需要分散などで売上高は横ばいか微減を続けている。それでも「新商品のプロモーション強化や全品100円セールなどの実施で、固定ファンはがっちり掴んでいる」(飲食専門誌記者)と一定の評価を得ている。

関連キーワード

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン