では、冒頭に挙げたクリスピー・クリーム・ドーナツは、なぜ不振なのか。もっとも大きな敗因は「味覚」にあるのかもしれない。
「米国チェーンのドーナツは、砂糖たっぷりで甘いだけの“大味”というイメージが強く、クリスピー・クリームもそう。購入時、並んでいる間に試食させてくれるドーナツは温かくて美味しいが、持ち帰ると食感がまるで違い、そのギャップが大きい」(都内在住の主婦)
フードアナリストの重盛氏も「米国のドーナツ文化をそのまま日本で定着させるのは難しい」と話す。
「米国発のドーナツはどれも甘さが同じで強いのですが、現地の人たちは必ずコーヒーと一緒に注文し、時にはコーヒーの中にドーナツを浸して甘さを調節しながら食べることもあります。
一方、日本人が好むドーナツは、甘さのレベルや砂糖の種類が幅広く、細やかな〈ホロ甘さ〉や〈柔らかい甘さ〉にも敏感です。もちろん米国流のテイストをそのまま『輸入』することも大事ですが、もう少し“日本ナイズ”した商品開発や食べ方のシーンを訴求できなければ、一世を風靡したクリスピーといえども淘汰されていくでしょう」
専門店、コンビニと業態にかかわらず、成熟した日本のドーナツ文化の中で生き残っていくのは容易なことではない。