中国はアフリカ各国に道路を建設しました。しかし降水量と排水能力を計算していないので雨期になるたび冠水します。地下に埋設された電線から、あふれ出した雨水に電流が流れ出して、感電死する人たちが大勢いるのです。
手抜き工事をした中国企業を検挙しようにも企業名をころころ変えるうえ、実体がない会社も多い。当然、中国はアフリカ各国の政府要人に金品を与えて抱え込んでいるので、中国企業が責任を問われることは滅多にありません。
アフリカでは中国人の犯罪も増加しています。一昨年にはケニアで77人の中国人ハッカーが銀行のシステムへの侵入を計画して逮捕されました。一説には彼らは中国当局の情報部員だったのではないかという話もあります。また2012年にはアンゴラで人身売買や強盗、強制売春などの罪で37人の中国人が検挙されました。したがってアフリカでは各地で反中感情が噴出しています。
それでも中国のアフリカ進出のスピードは加速しています。現在アフリカ全土には100万人以上の中国人が暮らしています。さらに中国政府には2億人から3億人の移民をアフリカに送り込む計画があると言います。
かつては中国人のほとんどが鉱山労働者、工事現場作業員などでした。しかしいま、ビジネスに成功して莫大な金を手にした中国人は、経営者や投資家に転身しました。投資される側のアフリカ各国の政府や企業は、投資家の要求や条件を飲まざるをえなくなります。
しかも成功者が本国から一族を呼び寄せて、サイドビジネスを任せる。そこで資本を手にした中国人がまた別のビジネスを手がけ、さらに親族を呼び、中国人の人口が増えていく。数十年後、気付いたときには町も文化も、そして国土も、中国に支配されているとしても不思議ではないのです。
【PROFILE】ザイール共和国(現コンゴ民主共和国)生まれ。国際政治評論家。1985年に来日し東京電機大学電子工学科を卒業。現在、千葉科学大学教授、神奈川工科大学特任教授。総務省、経済産業省、文部科学省の任期付き参与。近著に『中国が喰いモノにするアフリカを日本が救う』(講談社+α新書)。
※SAPIO2016年4月号