「いまのヤクザにはほとんど心の交流がない。親分子分といっても形骸化していて、大所帯になれば主流派と反主流派がいる。外様だって多い。たとえ1か月に一度であっても、直接顔を見合わせ、親分の威光を刷り込み続けないと、そうした人間は勝手な行動をはじめる。外部から壊れるのではなく、内部から腐って破滅する」(警察関係者)
山口組も、神戸山口組も、特定抗争指定を受ければ大きな打撃を受ける。
もちろんとどめの一撃は、暴力団に厭戦気分が漂っていなければ効果を発揮しない。ある程度暴力を発揮し、疲弊した段階でなければ実効性は生まれない。事務所が立ち入り禁止となっても、自宅として登録してあれば除外されるという盲点もある。
双方ともすでに腹は括っているだろう。それでもこうした前哨戦に当事者意識は薄い。身近な人間が殺されたとき、初めて暴力団からままごと気分の組員が抜け落ち、自らのメンツを懸けた殺し合いがはじまる。このままの状態が続けば、自分たちの存在が脅かされる段階になってようやく、暴力団はその凶暴さを発揮し、「誰でも殺せ」の号令が打たれる。
晴れて警察から抗争認定を受けた山口組の分裂抗争は、だから組員たちが本気になる前に潰すほかない。燃えさかる憎悪を一気に消し去るほど強力な武器を、警察はまだ手にしていない。
山口組の抗争が警察と世論を刺激し続ければ、社会は暴力団の非合法化へと突き進むだろう。そうなったとき日本の暴力団はようやく消滅する。
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号