スタジオアルタに話を戻すと、12時からの『笑っていいとも!』と、13時からの『いただきます』(フジテレビ系)は、観覧者を変えずに続けて生放送していました。そのため、『笑っていいとも!』レギュラーの明石家さんまさんがそのままステージに残って、『いただきます』司会の小堺一機さんと話し出したり、スタッフによるセットチェンジが映ってしまったりなどの臨場感やハプニングがありました。
そんな公開生放送らしい臨場感やハプニングは、「VTRを流してそれをスタジオで見る」「ワイプ、テロップ、笑い声などの演出を多用する」昨今のバラエティー番組では得られないもの。ステージの上だけで勝負しているから、出演者も観覧者も集中力が上がり、「面白ければ爆笑が巻き起こるし、つまらなければ沈黙されてしまう」という緊張感が生まれるわけです。
生放送ではなく収録にして観覧者を呼ばなければ、先に挙げた経費削減のほか、個人情報の取り扱い、乱入や暴言などのリスクはありませんが、それを気にするあまり「テレビ番組が無難なものばかりで、どのチャンネルも大差ない」という方向に進んでいるのが気がかりです。スタジオアルタで行われていた公開生放送は、テレビ番組を代表する面白さの1つだっただけに、それが失われてしまうことに危機感を抱かずにはいられません。
だからこそ3月31日に行われる、「スタジオアルタ最後の公開生放送」には注目しています。番組は、独立局ならではの過激さが売りの『5時に夢中』(MXテレビ)。「現在の生放送番組では最もコアなファンが多い」と言われる番組だけに、ハラハラドキドキのフィナーレを飾ってくれるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。