執行部の組長たちが続々と到着しても、組長たちはいつもの世間話をしているだけで、抗争のただ中であるという空気がめない。実は、今回は山口組のある人物から、是が非でも取材するよう要請されていた。
〈事件が頻発していても、山口組はあくまで平常時と変わらない〉
山口組はマスコミを使い、そうアピールしたかったのかもしれない。が、カメラを構えていたら、顔見知りの若い衆が近づいてきた。
「始まりましたね……」
その一言は妙に生々しく、ようやく非常時であることを意識した。迎えに並んだ中には、微罪で逮捕され、その後に釈放されたばかりのナンバー3の橋本弘文統括委員長と、ナンバー4の大原宏延本部長もいた。ほぼ執行部フルメンバーで、なかなか壮観な眺めだ。
ほどなくして高級車が2台、墓所に到着した。降り立った司忍六代目組長は、出所時のような白髪染めをしておらず、表情はかなり硬い。墓石に焼香を終えると、「よっしゃ」と一言だけ発し、すぐに車へと歩き出した。
「組長! なにか一言お願いします!」
レポーターが声を張り上げるが、完全に黙殺である。
※週刊ポスト2016年4月8日号