芸能

上條恒彦 本物の役者じゃないという思いはいつもある

上條恒彦が歌手・役者への思いを語る

 のびやかでスケールの大きい歌声で知られる上條恒彦だが、もともとは舞台に立つ役者を目指していた。上條が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 上條恒彦は高校を卒業した1958年、役者を目指して長野から上京、仕事を転々とした後、1962年に舞台芸術学院の十四期生として入学している。

「授業は大変でした。何が大変かというと、言葉です。自分では標準語を喋っているつもりでいたのですが、方言だけでなくアクセントもイントネーションも違うんです。それを直されました。それから、もともと運動があまり得意でなかったので、バレエのレッスンもつらくて。もう日々真っ暗でしたよ。

 僕は父親を早くに亡くしていて、家はとても貧乏だったんですが、山村ですから何かしら食うものはある。柿、栗、木イチゴ、キノコ、イナゴなどの虫類、蛙も蛇も食べました。ところが、舞芸に入ってからは何もない。
 
 最初は新聞配達しながら通学していたんですが、首になりまして。それでサンドイッチマンになったんですが、この仕事は雨が降るとあぶれます。そうすると一銭もなくなる。食うものがないってこんなにつらいことなんだと初めてわかりました。

 そんな頃、舞芸の二年先輩が歌声喫茶でバイトしていまして。こちらは屋根のないところで『いらっしゃい、いらっしゃい』で、向こうは屋根のあるところで歌を歌っていて、給料もいい。

 そうしましたら、別の歌声喫茶でアコーディオンを弾いてた先輩がオーディションしてくれて、彼の紹介でそちらの歌声喫茶に入れたんですよ」

 その後、上條は舞台芸術学院を辞め、歌手への道を歩むことになっていく。

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