4月4日にスタートしたNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』は、高視聴率を叩き出した『あさが来た』の勢いそのままに、早くも話題を呼んでいる。高畑充希(24)が演じるヒロイン・小橋常子は12歳のときに亡くなった父に代わり「父(とと)」となり、家族を養いながら戦中戦後を力強く生き抜く。朝ドラ初主演となる高畑は「刺身と日本酒が大好物。普段からおやじ臭いと言われるので、“おやじヒロイン”と聞いてビビッと来た」と語っており、ハマり役に期待は高まるばかりだ。
ヒロインのモデルとなったのは天才編集長・花森安治とともに婦人誌『暮しの手帖』を創刊した大橋鎭子(しずこ)だ。本誌読者には馴染みのない雑誌だけに詳しく知らない人も多いことだろう。そんな読者のために、鎭子の数々の伝説を紹介しながらドラマの見所を探る──。
1920(大正9)年、三姉妹の長女として生まれた鎭子。だが鎭子が10歳のときに父を亡くす。その際、父はこんな遺言を残した。
「鎭子は一番大きいのだから、お母さんを助けて、晴子と芳子の面倒をみてあげなさい」(大橋鎭子著『「暮しの手帖」とわたし』より)
その日から文字通り「父(とと)」代わりとなった鎭子は、小学5年生ながらも父の葬儀で喪主を立派に務め上げた。父の遺言を守るため、鎭子は家族を養おうと腐心する。鎭子を知る出版関係者は言う。
「わずか14歳で歯槽膿漏用の歯磨き粉の商品化を計画したそうです。結局、出資者のトラブルで断念せざるを得なかったが、あの企画力はそのころから養われたのかもしれませんね」
女学校卒業後、一家を支えるため銀行に就職。その後、新聞社へ転職するが、日本は太平洋戦争へと突入し、新聞も出せないほど戦況は悪化していく。だが、防空壕に身を隠しながらも鎭子は未来を見据えていた。
「戦争が終わったあとも、ふつうにお勤めしていては、給料も安いし、母と妹二人を幸せにすることは難しい。自分で仕事をしなければ……自分で仕事をすれば、お金がたくさん入ってくるだろう」(前掲書より)
そして導き出した答えは「女性の役に立つ雑誌を出版する」という計画だった。