──スーパーでやっている割引品がダメというのがわからないです。
「たとえば、原価100円、売値150円のおにぎりを1000個仕入れ、700個が売れて、300個を廃棄したとして考えてみましょう。このときの売上は150円×700個で10万5000円となります。一般的な会計方式であれば、この売上から売上原価10万円(100円×1000個)が引かれて5000円が粗利となります。
ところがコンビニ会計では、売上高から差し引くのは売上原価ではなく純売上原価(廃棄ロスを含まない)であるため、10万5000円(売上)-7万円(100円×700個)で3万5000円と7倍にも膨らみます。チェーン本部と加盟店は粗利分配方式を取っているから、チェーン本部は利益がぐっと膨らむわけです。
この例で150円の売値のおにぎりを80円に値下げして廃棄する分の300個を売り切ったと仮定します(小売業界ではこれを“見切り”と呼びます)。その場合、売上は定価分(150円×700個)+見切りで売れた分(80円×300個)で12万9000円となります。コンビニ会計では先述したように純売上原価だから12万9000円-10万円(原価100円×1000個)で2万9000円となります。
チェーン本部と加盟店は粗利分配方式を取っていて、たとえばですが、粗利の7割を本部、3割が加盟店が分配したとします(チェーン本部の取り分をロイヤリティと呼ぶ)。
すると、今のケースでいえば、2万9000円×70%で2万300円。一方、見切りせずに廃棄にした場合は3万5000円×70%で2万4500円と4200円もロイヤリティが増えるのです。見切りを嫌う理由はここにあります」
──変なお客さんにも困っているとか。
「酔客に絡まれたり、暴言を吐かれたりするのはもう慣れました。すごいのになると、店の看板の電源を引っこ抜いてスマホの充電をしていたり、トイレの電源でやはりスマホの充電をしてそのままにして、トイレの水が流れないなんて騒ぎもありました。トイレは特に鬼門ですね。この前などは、トイレ掃除したらタンクの裏側から万引きされた成人雑誌が山のように出てきたことがあります。
要はここで付録のDVDだけを抜き取って、カバンに詰めて帰るということ。現行犯でなければ捕まえられませんしね。トイレは万引きロンダリングの聖地といってもいいかもしれません。とにかく、最近のお客さんには変わった方が多くなって、少々の事には驚かなくなりました(苦笑)」