ビジネス

牛丼店多様化 店員の負担重くサービス低下の懸念も

全店で「ちょい飲み」サービスを導入する予定の吉野家だが…

「ユニクロ」をはじめ、“デフレの象徴”と呼ばれた企業が軒並み苦戦を強いられている。消費増税や円安による原材料高、人件費高騰などの企業負担を商品の価格に上乗せしようとすると、あっという間に客離れが起きる。多くの経営者が嘆くように、〈消費者の節約志向は続いており、財布のヒモは想像以上に固い〉のが実情だ。

 値上げによる客離れの影響をもろに食らっているのがファストフード業界、とりわけ10円単位の安売り競争で凌ぎを削ってきた牛丼チェーンだ。

 吉野家は既存店の客数が2014年12月~2016年1月まで14か月連続で前年を下回るほど不振に喘いでいる。4月11日に発表された2016年2月期連結決算でも、営業利益が前期比54%減の16億円と大きく落ち込んだ。

 その要因とされているのは、主力である牛丼の値上げだ。かつては280円(税込)で食べられた並盛り価格も、気がつけば380円にまで上がった。昨年来、米国産牛肉の仕入れ価が跳ね上がったため、やむを得ない価格水準ともいえるが、結果的には消費者に受け入れられなかった。外食ジャーナリストの中村芳平氏がいう。

「280円のままなら、牛丼に卵と味噌汁をつけてもワンコインで収まりますが、いまはセットにすると500円を超えてしまう。長らく懐に優しい価格でやってきただけに、牛丼単品100円の差は大きく、消費者は380円の価値があるとは認めていないのです。

 かたや、ライバルの状況を見ると、肉の品質を高めた〈プレミアム牛めし〉で一定のファンを掴んだ『松屋』や、〈牛丼+とん汁+おしんこorたまご〉のセットメニューを90円値下げして常時490円にした『すき家』は、品質や価格のチャレンジを続けて何とか客離れを食い止めています」(中村氏)

 もちろん吉野家もあらゆる策は講じている。昨年5月より発売し、「ヘルシー志向の高い女性や家族連れなど新たな客層を呼び込んでいる」(飲食関係者)と話題の〈ベジ丼(野菜中心の丼〉のリニューアルを進め、並盛りを50円値下げして480円にした。

 また、かつて米国で発生したBSE(狂牛病)の影響で牛肉の輸入がストップした際、牛丼の代替品として思わぬ好評を博した〈豚丼〉を4月から330円(12日まではキャンペーン期間で300円)で復活させるなど、牛丼以外の商品で“割安感”を出している。ネット上でも〈豚丼、懐かしい! 牛丼より食べたいかも〉〈300円でこの味なら納得〉といった書き込みが溢れている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

STARTO ENTERTAINMENTの取締役CMOを退任することがわかった井ノ原快彦
《STARTO社取締役を退任》井ノ原快彦、国分太一の“コンプラ違反”に悲しみ…ジャニー喜多川氏の「家族葬」では一緒に司会
NEWSポストセブン
東京都内の映画館で流されたオンラインカジノの違法性を訴える警察庁の広報動画=東京都新宿区[警察庁提供](時事通信フォト)
《フジ社員だけじゃない》オンラインカジノ捜査に警察が示した「本気度」 次のターゲットはインフルエンサーか、280億円以上つぎ込んだ男は逮捕
NEWSポストセブン
国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている(時事通信フォト)
「国政に再挑戦する意志に変わりはございません」山尾志桜里氏が国民民主と“怒りの完全決別”《榛葉幹事長からの政策顧問就任打診は「お断り申し上げました」》
NEWSポストセブン
中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト
参政党の神谷宗幣・代表(時事通信フォト)
《自民・れいわ・維新の票を食った》都議選で大躍進「参政党現象」の実態 「流れたのは“無党派層”ではなく“無関心層”」で、単なる「極右勢力の台頭」と言い切れない本質
週刊ポスト
苦境に立たされているフジの清水賢治社長(左/時事通信フォト)、書類送検された山本賢太アナ(右=フジホームページより)
“オンカジ汚染”のフジテレビに迫る2つの危機 芋づる式に社員が摘発の懸念、モノ言う株主からさらに“ガバナンス不全”追及も
週刊ポスト
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
NEWSポストセブン