日本小児学会は3月、「2011 年の小児死亡登録検証報告」を発表。「虐待死の可能性ありとして積極的な検証を行うことを考慮すべき事例」が毎年 350 名程度いると指摘した。このように虐待事件は頻発しているが、親戚の娘が我が子を虐待している場合、その子を引き取ることは可能なのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
親戚の21歳になる娘が自分の子供(3歳・女)を虐待し、福祉施設の預かりになっています。その後、娘とその夫は改心したと主張し、子供を引き取りたいと訴えているようですが心配でなりません。できれば私が引き取り養子縁組をした上で、親権を譲ってもらうには、どうすればよいでしょうか。
【回答】
虐待から児童を守るために、児童虐待防止法があります。児童の身体に外傷が生じる暴行を加えることや、わいせつ行為をしたり、食事を与えないことなどを虐待と定義し、虐待を受けたと思われる児童を発見した人に児童相談所への届け出を義務付けています。
児童相談所では、児童の安全のため、警察の協力を得て施設に2か月を超えない範囲で一時保護ができます。さらに、保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害する場合には、家庭裁判所の承認を得て2年間施設に入所させることができます。とはいえ、親子の関係は大切であり、防止法では児童が良好な家庭的環境で生活できるように親子が再統合することを目指して保護者を指導します。
ところで、15歳未満の養子は法定代理人との間で縁組し、連れ子などでない限り、家庭裁判所の許可を受ける必要があります。同意が前提ですから、親権者が反対しているのでは養子縁組は無理です。
しかし、6歳未満の児童について、実父母との親族関係を終了させる特別養子制度では、父母による虐待、悪意の遺棄、その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合、親の同意がなくても裁判所の許可で養子縁組ができます。
ただ、これは実父母の監護がひどく困難、又は不適当であることなどから児童の利益のため、特に必要があると認めるときに限って許可され、養親を希望する者が半年以上監護した実績をも踏まえて判断されますから、実際にはなかなか難しいと思います。
この実父母の虐待が続くときは、あなたが児童の6親等以内の親族であれば、家庭裁判所に親権の喪失や停止を求めることができます。父母の親権が停止等の間、あなたが児童の後見人に任命され、監護実績を積めば、特別養子の道が開くかもしれません。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年4月22日号