国内

不謹慎厨もそれを叩く人も「似たようなもの」との指摘

不謹慎狩りと不謹慎狩り叩きと(写真:アフロ)

 熊本地震の発生以来、「不謹慎狩り」が横行したという。そしてまたその「不謹慎狩り」を批判する声も多い。だが待ってほしい、そのどちらも変ではないか? コラムニスト・オバタカズユキ氏が疑問を投げかける。

 * * *
 熊本地震が発生してからこっち、一つの熟語が日本のネット上を徘徊している。「不謹慎」という三文字熟語だ。

 それは熟語単体でのみならず、「不謹慎厨(ふきんしんちゅう)」や「不謹慎狩り」といった造語としても頻出する。そして大半の場合、そういう連中やそうした行為の増殖を憂慮、批判する文脈で使われている。

 ところが、じゃあ、実際の不謹慎厨はどんな奴なのか、不謹慎狩りはどうなされていたのか確認しようとすると、これが意外に見つからない。なんでもかんでも「不謹慎だ!」と決めつけて叩く馬鹿者は、けっこう探してようやく発見できましたという程度しかいない感じなのである。

 それより気になるのは、そういう馬鹿者を叩く者の多さのほうだ。

 たとえば、ヤフーで「不謹慎」のリアルタイム検索をかけてみると、「なんでもかんでも不謹慎ってうんざりだよね」「不謹慎を連呼する人って偽善者で最低だから」「すぐ自粛とか不謹慎とかどんだけ不自由なんだこの国の民は」といったSNSの書きこみが無数に出てくる。現物を見てそう思ったかどうかはさておき、今はとりあえず不謹慎厨や不謹慎狩りを叩いておくのが正解だよね、といった空気が支配的で、そこに私は引っ掛かりを覚える。

 もちろん、この「不謹慎厨叩き」ブームみたいな状況が、何もないところから勝手に生まれたわけではない。自分のブログやツイッターなどで、熊本地震の被災者のために寄付したことを明かしたり、被災地にエールを送ったり、地震発生直後に笑顔の写真を載せたりした芸能人たちが、「不謹慎だ!」と集中攻撃されたことは事実だ。『東スポWeb』をはじめ、たくさんのメディアがその様子を報じ、「ネット民」の歪みを指摘した。

 ただ、言うまでもなく、そんな「ネット民」はインターネット利用者のうちのごくごく一部で、おそらくは震災の有無に関係なく、なにかあるごとに芸能人、著名人に罵詈雑言を浴びせて楽しんでいる馬鹿者であるにすぎない。心理分析の対象にするまでもない、頭のネジが外れている者、モラルの低い者が、ちょっとしたカタルシスを味わいたくて歯をむき出すのである。

 噛みつかれる側にとっては迷惑千万な話だが、名前で仕事をするからには覚悟すべきいわゆる有名税の一種だろう。それを食らって心が折れるくらいならブログやSNSをやらなければいい。もしくは、人気ミュージシャンが繁華街でゲリラライブする際しっかり警備体制を敷くように、炎上前提で安全策をとっておく。有名人がネット上で言いたいことを言うのは、そういうことだと思うのだ。

 ネットの世界だろうがリアルだろうが、サイレントマジョリティよりノイジーマイノリティの声のほうが大きいのは致し方のない現実である。サイレントマジョリティに属していた人が、「叩かれている芸能人が気の毒でならない」と声をあげるのは自由だが、不謹慎厨らはその芸能人が気の毒な状態になればなるほど快感を覚えるので、同情は却って連中を喜ばせるだけだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン