三流大学生を演じる中井貴一、時任三郎、柳沢慎吾が、一流大学生と嘘をつき、立ち上げたサークルに参加した看護学生の手塚理美、石原真理子(当時)、容姿にコンプレックスをもつ女子大生の中島唱子ら、規格外の落ちこぼれたちが、社会問題や恋愛、家族関係に直面し、葛藤する社会派ドラマ。アラフィフ、アラ還世代は、いまだに印象的な場面や、自分を投影させた役柄について熱く話せることだろう。
話を視聴率に戻すと、昨今のドラマというのは、初回の数字が獲れて、まず、なんぼ。裏環境や時間帯、さらに今期のように災害のニュースとドラマ開始が重なったときには、目論んでいた視聴率とかけ離れた結果になってしまうことも少なくない。
傾向としては、連続ドラマであっても1話完結で、見終わったとき、スカッとできるドラマが人気で、『半沢直樹』(TBS系)や『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)“のようなもの”に偏っている感がある。
が、『ゆとりですがなにか』は、正反対。毎回、考えさせられるし、スカッとしないことだらけ。でも、出て来るキャスト全員を応援したくなるような作品だ。
現場の雰囲気はとても良いと聞く。実は、撮影が中盤に差しかかった先日、演出の水田氏からキャストに異例のメッセージが伝えられたという。
それは、「視聴者の皆さんが年齢を重ねたとき、自分の人生を変えたドラマだったと振り返ることができるような作品にしよう」というもので、岡田将生は涙を浮かべながら聞いていたとか。
何やら男臭い現場のように思えるが、プロデューサー陣の一人には、日本テレビの枝見洋子氏が名を連ねている。
映画『桐島、部活やめるってよ』の企画、プロデュースに関わった若手で、「連続ドラマのプロデュースは今回が初めて」なのだそうだ。
枝見氏は、「クドカンさんの素晴らしい脚本に、さらに水田さんならではの演出が加わって、あ~、こうやって本が映像になっていくのだということを日々学んでいます」と謙虚だが、「大袈裟でも綺麗事でもないけれど、見ていただいたら、絶対に、“その先”に進める作品」と胸を張る。
放送作家である私はバラエティー班として、視聴率のコンマ1で番組の今後が左右されてしまう場面を日々見ているし、自身もそれと闘っている。もう少し獲れているだろうと思った担当番組の数字が、翌日、それより2~3%少ないことはしょっちゅうで、“テレビ離れ”という言葉は、年々、厳しくのしかかってきている。
ドラマ班も同様とお察しするが、紙メディアやネットを中心に、毎回の視聴率が取りざたされてしまうドラマの現場で、予想通りの結果が出なかったとき、どうテンションを保っていくのだろうか…と他人事ながら心配することもある。
『ゆとりですがなにか』の現場で水田伸生氏がキャストに贈った言葉は、懸命に演じている若き俳優や、たとえば枝見氏のように、これからもっともっとドラマに携わるであろう裏方の心にも深く刻まれたに違いない。
私は同ドラマのターゲット外の層だが、ドラマ好きの一人として、今期でいちばん“私好み”の作品だと言い切れる。いまからでも遅くない。『ゆとりですがなにか』を見てほしい。