国内

東日本大震災から5年 防波堤完成率は20%にとどまる

 東日本大震災から5年が過ぎたが、巨大地震が引き金となって、およそ5年以内に必ず起こるといわれている大噴火が危惧されている。たとえば、2010年2月の南米・チリで起きたマウレ地震(M8.8)では、翌2011年6月にプジェウエ・コルドン・カウジェ山が噴火した。その後は近隣の活火山が大きな噴煙を巻き起こして大噴火。1960年のチリ地震(M9.5)、1964年のアラスカ地震(M9.2)、2004年のスマトラ沖地震(M9.1)でも、発生から5年以内に周辺の火山が噴火している。そしてその兆候が、日本でもついに現われた。

 5月6日、新潟県と長野県の県境にそびえ立つ新潟焼山(やけやま)で水蒸気噴火による降灰が確認され、山頂から半径1キロメートル以内が立ち入り禁止区域に設定された。さらに、東日本大震災以降、北米プレートと太平洋プレートの境界が10メートル以上滑り、ズレた分だけ北米プレートが太平洋プレートに新たに乗っかる形になった。これは南北400キロにもわたり、その重量に耐えきれなくなった太平洋プレートが割れれば、アウターライズ地震を引き起こす可能性がある。

 この際注意しなければならないのは、地震によって発生する津波だ。地震学者の島村英紀・武蔵野学院大学特任教授はこう語る。

「太平洋プレートが割れる位置は、プレートの境界線ではなく、よりアウター(外部)になる。前回の震源地よりも、沖側に移動すると考えられますが、沿岸部からの距離が遠くなった分だけ水深が深くなり海水の量が増えるため、3・11より威力を増した津波が来る可能性もあります」

 震災から5年経ったいま、津波対策はどうなっているのか。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏の指摘だ。

「宮城県は高さ10~14メートルの防波堤を沿岸部に延々と建設する計画ですが、完成率は約20%(今年3月末現在)と遅々として進んでいない。“景観を損なう”などの理由で地元住民の反対も根強く、完成時期は見通せないのが現状です。

 土木工学的に見れば防波堤は全てが繋がって初めて効果が表われます。現状のままでは、3・11時のような津波が襲って来れば、被害を抑えられないでしょう」

 復興庁によれば、東日本大震災による避難者はいまだ16万5000人にのぼり、復興そのものが道半ばだ。新たな震災への対応策に加え、生活再建など、地元住民の不安を取り除く作業は山積している。

※週刊ポスト2016年5月27日号

関連記事

トピックス

本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
2021年ドラ1右腕・森木大智
《悔しいし、情けないし…》高卒4年目で戦力外通告の元阪神ドラ1右腕 育成降格でかけられた「藤川球児監督からの言葉」とは
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
この笑顔はいつまで続くのか(左から吉村洋文氏、高市早苗・首相、藤田文武氏)
自民・維新連立の時限爆弾となる「橋下徹氏の鶴の一声」 高市首相とは過去に確執、維新党内では「橋下氏の影響下から独立すべき」との意見も
週刊ポスト
新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン