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気の迷いで提出した離婚届 無効の可否について弁護士見解

 昨年2月に結婚したばかりの俳優・ジョニー・デップが離婚することが5月26日に判明。今後、莫大な資産を巡って泥沼の法廷闘争が繰り広げられる可能性も生じている。離婚というのは万国共通で、大なり小なり“勢い”が必要なものだが、気の迷いと勢いのあまり離婚届を提出してしまった場合、その離婚届を無効にすることはできないのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 2年前に事業に失敗し、妻とも離婚。当時は自暴自棄にもなっており、離婚届を出してしまったのですが、その後、友人たちの協力もあって現在は生活も安定しています。そうなると、なぜ離婚したのか悔いが残り、提出した離婚届を訴訟してでも無効にしたいと思っているのですが、実際に可能でしょうか。

【回答】
 婚姻無効は民法に規定されていますが、離婚無効は特に定めがありません。しかし、協議離婚は夫婦間の合意ですから、意思の合致がなかったり、本心は離婚する意思ではないことも起きえます。

 通常の取引が無効になるように離婚の無効もあるはずです。現に離婚無効確認を求める事件が提起され、その判決が言い渡される場合もありますが、離婚は身分行為であり、届け出をして効力が生じるので、同じとはいえません。

 取引の場合は先方を信頼して多くの利害関係が派生するので、簡単に無効は認められません。例えば、売買当事者が本当は売買する気がないのに債権者の追及を免れるため、売買を仮装して財産を移せば無効ですが、仮装の買い手から知らないで買った人には無効を主張できません。

 一方、身分関係では、そうした取引の安定は必要がないので、離婚意思がないのに離婚し、実態は夫婦のままという場合、無効を認めるべきだとする議論もあります。しかし逆に、届け出をして世間に公表される身分関係の安定こそ重要であり、離婚の届け出で法律上の夫婦でなくなっても、内縁関係と理解できるとし、要するに「届け出る」ことの合意があれば、有効との考えも有力です。

 最高裁は、生活保護を受ける方便として離婚した妻が離婚無効を訴えた裁判で、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいて届け出た離婚を無効とすることはできないと判断しています。反面、夫婦の危機に詫びを入れ、反省を示すために差し入れた離婚届を勝手に提出された場合には、その当事者には離婚届を出す意思がなかったのですから、離婚は無効といえます。

 あなたの場合、離婚届を出す意思があったとすれば、その無効を主張することは難しいでしょう。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年6月10日号

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