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野村證券 「トランプ不況」をリスク要因としてみなさず

 5月9日に発表された野村證券の投資情報部が投資家向けに作成するレポート『マーケットアウトルック』が注目されている。そこにはこうある。

〈16年度には緩やかな業績回復が続く中、日本株の反転が期待されます。16年年末の日経平均株価20000円との想定を継続します〉

 昨年12月には2万円をつけた株価は年初の急落以来低迷し5月は1万7000円を下回る値動きが続いた。反転上昇の気配も見えない市況のなか、「年末2万円回復」という予測は実に強気に映る。

 日本経済にはマイナス要因が多く、先行きは暗いと思う空気が漂っている。ところが、「野村レポート」を読むと、それらのマイナス要因を決して景気リスクと見なしていないことが分かる。野村は世間が抱く「懸念」を挙げたうえで、それとは異なる独自の分析を示している。

 米大統領選で懸念される「トランプ不況」もそのひとつだ。

 最近行なわれた米世論調査の平均支持率では、共和党の候補指名が確実なドナルド・トランプ氏が民主党の最有力候補であるヒラリー・クリントン氏を僅差で逆転した。米国の現状に不満を抱く有権者の支援をバックに、「トランプ大統領誕生」はますます現実味を帯びている。

 トランプ氏は日本のリスク要因と考えられてきた。「アメリカ第一主義」を掲げ、「日本、韓国を守ることなどできない」と豪語するトランプ氏が大統領になれば、日本の安全保障面の負担が増加し、経済活動の重しとなることが予想される。

 また徹底した保護主義政策を打ち出し、TPP(環太平洋経済連携協定)の合意を撤回することも共和党予備選中から“予告”している。

 そもそも、世界中から危険視されているトランプ氏が当選すれば、米国株が暴落し、世界経済が大混乱に陥る懸念がある。

 だが野村は、“トランプ大統領”をリスク要因とはみなしていない。1800余りの米国の新聞記事、調査報告などから「経済」「不確実性」「政策」というキーワードを抽出し、米国経済の先行きの不透明さを推計する「米国経済政策不確実性指数」は現在、2015年11月以来の低水準にとどまっており、現時点で米国メディアが大統領選を経済リスク要因と見ていないことを示している。

 また、トランプ氏は次第に“現実路線”に舵を切ると示唆する。レポートではこう記している。

〈トランプ候補が、7月の共和党全国大会でのプラットフォーム発表までに、経済政策を修正し、共和党主流派の主張に近づけることができるかが注目されよう〉

 つまり、本選までにリスク要因が消える可能性を指摘しているのだ。

※週刊ポスト2016年6月10日号

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