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「異相の仏像」を通じて日本人の心を知る

大威徳明王像(真木大堂)

 6つの顔、6本の腕、6本の脚を持つ、真木大堂(大分県・豊後高田市)の大威徳明王像。手を合わせて指を立てる姿がラグビーの五郎丸歩選手のルーティンポーズそっくりともいわれたが、雄々しい姿は如来や菩薩の化身。大衆を強力に導くために姿を変えたとされる。

「釈迦という歴史に実在した人物が悟りを開き、如来へと肉体が変化した様を表わしたのが仏像です。仏像は如来を頂点に菩薩、明王、天と4段階に大別され、明王の一尊・大威徳明王など様々に枝分かれします。仏像とはいわば、仏教という宗教が作り出した様々なキャラクター。役割などによって、多彩な姿に変化するユニークな存在なのです」

 こう語るのは、『仏像のひみつ』(朝日出版社)などの著書がある、清泉女子大学文学部の山本勉教授。インドから中国、韓国を経由して仏教が伝来したのは飛鳥時代、6世紀のこと。仏像も共に伝来し、日本でも作られるようになった。

「食文化しかり、外来のものを和風にアレンジするのが日本文化の面白さ。木喰上人(もくじきしょうにん)の三十三観音像(新潟県・小千谷市)などは象徴的です。江戸時代の仏像ですが、木喰上人が仏像の細かい約束事を離れて自由に彫ったことで、ふくよかな表情を持つ独特の姿が生まれました。根の生えた樹木を彫ったかに見せる西光院(茨城県・石岡市)の立木観音像も、極めて日本的な発想です。仏教の伝来以前から日本にあった、樹木に対する信仰と合体しています」(山本教授)

 奈良時代の僧・行基は各地に木彫像造立の伝承を残し、真野寺(千葉県・南房総市)の覆面千手観音も彼の作と伝えられる。

「尊顔が面で覆われた異相の観音像で、後の時代に彫られた面をつけている姿は真野寺の伝承に由来します。仏像そのものにも固有のストーリーがある。アジアの仏教国のどこよりも、日本は繊細で多様な仏像文化が発展したのです。異相の仏像を通じて、『日本人の心』を知る。仏像鑑賞の醍醐味といえますね」(同前)

撮影■太田真三

※週刊ポスト2016年6月10日号

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